就職活動 コロナ渦が変えた常識
コロナ渦で就職戦線は異変を生じ、常識を変え始めています。企業説明会や採用面接はオンライン方式が浸透し、就活の「ニューノーマル」は定着したかに見えます。その一方で、コロナ流行で大学時代に留学や体育会活動などが制限された結果、十分な自己PRの材料を持たないまま就職活動に臨む学生が増加しました。これは、学生のみならず採用担当者も戸惑わています。
採用担当者の懸念は、『ガクチカ』のない新卒学生ばかり採用しなければならなくなることです。ガクチカとは、企業のエントリーシートの設問や採用面接で新卒学生が決まって質問される「学生時代に頑張ったこと、力を入れたこと」の略語です。学生にとっての大きなPRポイントです。
22年卒の学生からは、コロナ禍での不自由な学生生活を余儀なくされています。その結果、留学をあきらめたり、体育会活動で最後に打ち込むはずだった大会が中止になったりした学生が、ガクチカなき就活(自己アピールなき就活)に至っています。このことが、学生にとっては不安心理となり、自分に自信を持つことが難しくなっています。
一方で、企業側は、学生との対面機会が減少したことでミスマッチが起こっていると声をあげます。「学生の興味・関心の喚起が困難になった」、「入社動機の形成が難しくなっている」など、コロナが採用活動に「影響する」と回答しています。なんと、2021年の夏に一部上場企業の多くが訴えたのは、「学生と会うことなく内定を出さざるをえなかった」というのです。
そして、2022年の夏、私が学生側と企業側の両方から就活戦線の様子を聞いての感触は、企業側が人材不足を背景に内定を昨年よりも早く出しています。本来は6月からインターンシップと並行して内定を出していくのですが、6月前に内定を出しているのが実態です。学生にとっては、企業を十分に知ることができなかったり、既に採用枠が埋まっていたり、喜べる状況ではありません。大学3年生の夏からインターンなど就職活動が始まっているのが現状です。
企業側の人材不足は解消しそうにありません。せっかく採用しても、内定辞退や3年以内の退職が止まりません。学業を阻む青田刈りを規制した常識は消滅し、卒業を待たない自由採用はコロナが終息したとしても加速することでしょう。 (学会会員:根本幸治)
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