No356記憶に残る言葉【株式会社クラロン;田中須美子会長(当時)】
今回は2017年9月に坂本ゼミ夏季合宿としてのご訪問や東京にお越しいただきお話を伺った福島県にある『株式会社クラロン』さんをご紹介させていただきます。
当時すでに90歳を超えておられた田中須美子会長にお話しを伺いました。
田中須美子会長は現在は代表を退任されています。背筋がピンとして、しっかりとした口調でお話され、活力がみなぎるそのたたずまいは、すべての人の模範となり尊敬を超えた存在感がありました。
●概要 (現在ホームページから)
商号 株式会社 クラロン
創業 1956年
創業者 田中善六(2002年没)
経営責任者 代表取締役社長 矢内 都夫
住所 福島市八木田字並柳58
資本金 6,300万円
従業員数 118名 うち障害者数31名(うち重度10名) 障害者雇用率34.7%(2021年10月末現在)
主な事業内容 トレーニングシャツ・パンツ・Tシャツ・ポロシャツ等の学校体育着専門メーカー
取扱実績 青森県、秋田県、山形県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、埼玉県、新潟県等、東北6県及び北関東地区を中心とした小中高等学校約1100校、防衛医科大学校体育着、福島県・岩手県選手団国体ユニフォーム、福島県選手団インターハイユニフォーム など
●創業者ご夫婦
創業者は田中善六氏。田中須美子氏の夫です。
善六氏は2002年に突然病気で亡くなります。深い悲しみの中、妻の須美子氏は78歳のとき社長に就任されます。
●障がい者雇用の開始は創業1956年の時から
創業時の社員数は7名でしたが、すでに3名の障がい者が在籍(障がい者雇用率17%)していたというクラロンさん。
1937年創業の日本理化学工業株式会社さん(神奈川県川崎市)が2名の障がい者を雇用した年は1960年ですからそれより4年早いのです。
●印象的だったお話
田中会長は“社員にとっては会社にくることが生き甲斐”と語ってくれました。
同社では毎年年末に無遅刻無欠席の表彰を行っていますが、表彰者の多くが障がい者の方だそうです。
また、例えば忌引きが5日間あっても2日で出社してくる社員や、風邪をひいても出社してくる社員がいます。会社にくることが楽しい時間になっているということですね。
“人生は余生ではない、与えられた人生”という言葉も印象的でした。
田中会長のお話は、全てにおいて学びになります。
●最後に
繊維業界において、特に縫製業はメーカーの下請けの仕事が多く厳しい環境にあります。
学校の統廃合や人口減の影響で得意先である学校等の業界は厳しい環境にあります。
生地の在庫はできるだけ少なくしてはいるものの、常に年間売上金額の1/10に及びます。学校の指定が変われば生地は不良在庫となってしまうリスクもあります。在庫は生地だけでなく校章やライン、ボタン、ネームプレートも在庫する必要があります。近年仕入れのための最低発注ロットが大きくなっていて、外部環境は厳しさを増すばかりです。
お話を伺った当時の生産量は年間50万枚、2000枚/日、売上の95%は学校向けで、その他は個人チームなどのプライベート分となっています。
同社がこれからも永続していくことは簡単ではないことを多くの方に知っていただきたいと思います。
***補足***
この投稿では「法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室」や「人を大切にする経営学会」での経験をもとに毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(人を大切にする経営学会会員;桝谷光洋)
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