No363記憶に残る言葉【十勝しんむら牧場;新村社長】

今回は2013年9月と2017年9月の2度、坂本ゼミ夏合宿先として訪問させていただいた北海道にある『十勝しんむら牧場』さんをご紹介致します。
当日は新村社長にお話を伺いました。

 https://milkjam.net

●概要(現在ホームページ情報より)
名称 有限会社 十勝しんむら牧場
創業 昭和8年(1933年)
設立 平成12年6月1日(2000年)
資本金 300万円
代表者 新村浩隆
事業所 北海道河東郡上士幌町字上音更西1線261番地
従業員数 14名
事業内容 放牧による酪農業、乳処理業、乳製品加工業、菓子製造業、飲食業
主力商品 放牧牛乳、ミルクジャム、生クリーム、チーズケーキ、クロテッドクリーム他
経営面積 草地80ha、山林25ha
飼養牛頭数 経産牛85頭、総頭数150頭
年間生産乳量 600トン

現在4代目の新村浩隆社長、23才の時に放牧酪農へ転換する大きな決断をしました。その判断に至った農業への想いは、国やJAの枠を大きく超えて100年、500年、1000年先を見つめたものでした。

●放牧を始める前のしんむら牧場
・牛を牛舎で飼って、エサは口元まで運び、牛糞は人間が集めて処理をしていた
・つなぎっぱなし、まったく歩かせない、太陽を浴びることがなく不健康な牛になる
・本来は牛が自分でできることを人間の都合で牛舎に飼っていた
その結果、
・人間が毎日15~6時間働く
・エサ代、重機の燃料代がかかる
・牛が健康にならない。病気の牛の世話をしなければならない
牛を縛ることで人間も縛られる悪循環だったのです

●それまでの収入の仕組みと問題意識
・牛乳を搾った量が収入になる
・JAのタンクローリーがきて、牛乳を回収し月末に入金される
・たくさん搾れば売上はどんどん上がる
・多くの牧場経営は規模の拡大に走り200頭、300頭と拡大を図る
・餌代、重機設備、重労働、JA依存が増えていく
・一方で牛乳の質を追求せず美味しい牛乳を作ろうとはしない
仮に美味しい牛乳をめざし、コストをかけて、他の牧場とは違う飼い方をしても、販売先がJAである以上、タンクローリーの中ではすべての牛乳が混ざってしまい、牛乳の買取価格には反映されないのです。

新村社長は安心安全な品質を重視せず、価格決定権がない現状を変えなければならないと考えたのです。

●出した結論
放牧酪農を確立し、安心安全な牛を育て、美味しい牛乳を作り、直販体制を確立すること

●最初の一歩は土作り(3~8年をかけた)
・いい牛を育てるためにはいい草が不可欠
・いい草を育てるためにはいい土が不可欠
酪農において土づくりが最も大切、全区画の土壌分析を行い、根本から見直し、定期的に検査し、生態系が回復しています。
その結果、
・土が本来の力を回復してくると微生物や昆虫が増えて生態系が整う
・分解された牛糞の栄養素を草が効率よく吸収
・自然の潜在力が回復すると同時にその循環が始まる

●放牧酪農がもたらしたメリット
・牛が草をたべることで肥料、輸入穀物購入量が減少
・補助金依存度が減少
・牛の病気がほとんどなくなった
・牛糞を集める作業もなくなり、重機が減り燃料代も減った
・不要となった重機保管場所をミルクジャム製造工場に転用
・社長の作業時間がなくなり、経営のための時間が増えた
・直販中心の事業に転換できた
・新たな商品開発や新しい養豚事業を開始した

●主な商品(直販中心に全国へ販売)
・ミルクジャム 日本初の製品
・放牧牛乳 低温殺菌処理
・クロテッドクリーム 日本初の製品
同社のオンラインストア https://www.milkjam.com/ で購入が可能です。

●最後に
同社は急成長や急拡大とは無縁で、社長が納得したやり方・目の届く範囲の成長に徹しています。土作りを徹底し自然の潜在力を引き出して循環させる安心で安全な酪農を行っています。
その姿は、人があらゆる動植物とともに自然の一部として存在しているように映ります。自然を壊さずに維持していくこと、即ち自然と共存していくことが何よりも大切だと感じることができます。

***補足***
この投稿では「法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室」や「人を大切にする経営学会」での経験をもとに毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(人を大切にする経営学会会員;桝谷光洋)

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