造園の未来のために、「安心して働ける仕組み」を考える

植彌加藤造園株式会社の田中幹です。

弊社が拠点とする京都では、新緑が風にそよぐ季節を迎え、人びとの往来もますます盛んになっています。我が家の3歳になる子どもも、燦々と降り注ぐ日差しを浴びながら、毎日元気いっぱいに駆け回っていますが、そうした姿を眺めていると、ふと考えさせられることがあります。

「この子たちが成人する頃、日本の社会はどうなっているのだろうか、京都の造園界はどのように変化しているのだろうか」と。

造園を含む建設業界では、長らく「担い手不足」が叫ばれてきました。弊社も例外ではなく、たとえば10年以上勤めた社員が「さあ、これから!」というタイミングで退職してしまう事態が続いています。入社して間もない社員が、理想とのギャップに頭を悩ませ退職の道を選ぶことは仕方ないとしても、長年ともに歩んできた社員(仲間)が会社を去ってしまうのは、やはり寂しいものです。何より、組織の中核になりつつあった人財が欠けることは、非常に大きな痛手となります。

とくに注目すべきは、近年退職した社員の多くが30代後半〜40代前半を占めることです。仕事のあれこれについて理解が深まり、いわゆる「1人工」以上のパフォーマンスを発揮してくれる成長期に差し掛かる一方で、家庭を持ち、子育て真っ盛りの時期でもあります。また、両親の介護が必要になるなど、何かにつけて人生の転機に差し掛かる年代とも言えます。そうした背景から、彼/彼女らの決断は軽いものではなかったことが推察されます。ご家族やパートナー、周囲の人たちと何度も相談を重ねた末の決断だっただろうと思われます。

とはいえ、重ねて申し上げますが、キャリアをともに積み上げてきた彼/彼女らを失うことは、会社にとって一個の財産を失うことと同義です。ハローワークの求職者から、すぐに誰かを補填すれば間に合うというものではありません。

視点を変えれば、現在の植彌加藤造園、また京都の造園界は、仲間がいかなるライフステージにおいても安心して働き続けることができる環境を整備できていないと言えるのかもしれません。だとすれば、おそらく給与の見直しだけでは解決できない複雑な問題を孕んでいます。心身ともに「この会社にいれば安心だ」「希望が持てる」と思える環境をどうつくるかが、これからの経営において急務となっていくのでしょう。

思うに、この問題の解決にあたっては、以下のような仕組みづくりが求められます。

1. 社員がご家族や友人と過ごすプライベートな時間を確保できるような環境整備
2. キャリアの見通しを明確にすることで、働き続ける安心感を高める
3. 長く働くほど安心感が増す仕組み(退職後のキャリア支援、ライフステージに応じた柔軟な働き方など)

造園界は、長い時間をかけて技術を磨き、経験を積み重ねていく仕事です。その道のりを少しでも安心して歩み続けられるよう、経営側としてどのような支えができるのか。「人を大切にする経営」こそが、これからの造園界の持続可能性を高めるカギになるのではないでしょうか。 ましてや、日本を代表する景観を誇る京都において、地元地域の造園界の停滞・損失は死活問題です。失ってはならない存在であることをいま一度周囲にも丁寧に説明しつつ、その内部にいる私たち自身も、「わざ」の継承に意識を奪われ過ぎるのではなく、「こころ」の通った仕事のあり方を、深い洞察力を持って創造していかなければなりません。

人財塾7期生
植彌加藤造園株式会社
田中幹

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