学びを実践に落とし込むためには、強い「気持ち」が必要。

 私が所属する株式会社天彦産業は、大阪、上海、バンコクに拠点を構え、特殊鋼流通として、自動車・機械・刃物・ばね・部品などの製造業を支える鉄鋼素材および加工製品を提供しています。明治8年(1875年)の創業以来、幾多の経営危機を乗り越えてまいりました。

 今年は創業150周年という節目の年です。歩みの中で築かれてきた信頼と理念を次代へとつなぐべく、近江商人の「三方よし」の精神を継承し、「社員第一主義」を基盤に、人を大切にする経営に取り組んでいます。

 昨年、私は人財塾7期に参加しました。講師陣の教えは深く、共に学ぶ仲間たちからも多くの刺激を受けました。学びの環境は、これ以上ないほどに恵まれていたにもかかわらず、私はそれを実践に結びつけることができませんでした。その理由は明確で、足りなかったのは自分自身の「意志」と「行動」でした。講義を聞いて満足し、行動を「先送り」するという悪癖を克服できなかったのです。だからこそ今、再び8期で学び直しています。

 この実践力の欠如について考えたとき、ふと、15年前、44歳の時に参加した姫路城から大阪城までの100kmウォークでの体験を思い出しました。1回目の挑戦では、前半のオーバーペースがたたり、45km地点で座り込んでの長い休憩によって脚の筋肉が冷えて普通に歩けなくなり、82km地点でリタイアしました。心が折れた、挫折の瞬間でした。

 半年後に再挑戦した際には、その反省を活かし、立ったままの短い休憩をこまめに取ることで、脚の冷えを防ぎました。それでも危機は訪れました。70km地点で両足に水ぶくれができ、激痛に襲われ挫けそうになったのです。「たとえ水ぶくれが破れようとも、これは命に関わる傷ではない」と、心に言い聞かせた瞬間、不思議と痛みが嘘のように消え、最後まで完歩することができました。あのとき、肉体の限界を越えるために必要だったのは、「気持ち」の持ち方であり、「気持ち」が肉体や行動を支配しているのだと実感しました。

 これは、経営における学びにも通じると感じています。知識を得ることが目的ではなく、それを実践へと変える「意志(気持ち)」と「行動」が不可欠です。そして、その意志は日々の判断や小さな行動にて育まれるものです。100kmウォークも経営も、途中であきらめるのか、前に進み続けるのかは、結局「気持ち」が決めるのです。

 今年こそ、人財塾で得た学びを確実に行動へと変えていきたい。志を実践に落とし込み、よりよい経営を通じて、社員と共に「成長のよろこび・幸せ」を実感し、人類社会の向上に貢献していきたい。第一歩として、この4月、年度方針に「お客さまとともに幸せに」を掲げました。「社員第一主義」を深化させ、「三方よし」を体現させたい想いを「ともに幸せに」と明示しました。

 先送りという自分自身の悪癖をなくし、「三方よし」を実現する、いい会社づくりを実践するために、本年、人財塾8期で学んでまいります。

人財塾7期生
株式会社天彦産業
樋口威彦

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です