最低賃金過去最大の上げ幅

今週、今年度の最低賃金の引上げ幅が63円で決まりました。物価高の背景などを考慮し過去最大の上げ幅となり全ての都道府県で1,000円を超えることになります。物価が上がっていることからも人件費の引き上げは当然とも思えます。しかし、一方では「中小企業にとっては苦しいだけ」「政府は中小企業を排除する気か」「どんどん潰れろということか」などの声も上がっています。現実としは今後、人手不足倒産、物価高人件費高倒産は確実に増えることが予想されます。

人を大切にする経営では人件費について具体的施策は坂本光司学会長から学会創設以前より様々論じられております。(ちなみに日本でいちばん大切にしたい会社が出版された2008年の東京都の最低賃金は739円でした)坂本光司学会長は「年収の基準は年齢×15倍」「毎年の昇給」「平均給与は公務員並みを目指す」「経営計画は人員、賃金計画から策定し売上を決めるのは最後」など人を大切にする経営における目的体系として賃金に関する具体的施策を論じてきました。それも、賃金の向上は、社員とその家族の幸せに直結する経営における目的の重要な指標の一つであるからです。

さらに、振り返ってみると坂本光司学会長は17年ほど前、リーマンショックの直後、派遣切りが社会問題化されたさなか論じていらっしゃいました。当時の人余りの時代に法政大学大学院の社会人大学生に向けて「日本の人口構造を見れば近い将来、確実に中小企業は人手不足に陥る、いい加減な経営を行っている企業はいずれ淘汰される」と。多くの経営者は人手不足など来るはずもないと気にも留めない当時でありました。

社会的に「大変だ!」と賃上げをとらえている中、我々人を大切にする経営を行ってきた学会員の皆様は、今回の過去最大の引き上げ幅の賃上げをどうとらえているでしょうか。確かに、ここ数年賃上げを努力して行ってきた会社においてもこのまま毎年6%の賃上げは現状では難しいと捉えている会社も多いはずです。

しかし、人を大切にする経営は今後も恒常的に賃上げしていくために必要な取り組みをすでに示しています。「ガラス張り経営」「腹八分経営」「高付加価値経営」「非価格競争戦略」「全員参加型経営」「バランス経営」などの取り組みについて時間軸をもって取り組むことで賃上げの財源である利益が確保できると証明しております。つまりは、恒常的賃上げを行うには経営者のみが努力するということでは難しいでしょう。社員皆が「自分の給料を上げる」「値上げ交渉を不退転の覚悟で取り組む」という当事者意識が無ければなりません。そして、そのためには「ガラス張り経営」で財務データーを開示しておくことが必要になってきます。今回の賃上げ騒動で改めて人を大切にする経営の処々の取り組みはすべてが有機的に結びついた普遍の法則だと改めて認識することができます。

     (人を大切にする経営学会 事務局次長 株式会社サクシード 代表取締役 水沼 啓幸)

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