No378記憶に残る言葉【キシ・エンジニアリング株式会社;会長 岸征男氏】
今回は2018年2月に坂本ゼミの島根合宿先としてご訪問した『キシ・エンジニアリング株式会社』さんご訪問から岸 征男会長のお話をご紹介致します。
●概要 (視察時の資料をもとに加筆 https://kishieng.jp/)
社名 キシ・エンジニアリング株式会社(視察時の資料をもとに加筆 https://kishieng.jp/)
創業者 代表取締役会長 岸 征男
代表者 代表取締役 岸 明広
設 立 1985年11月22日
資本金 1,500万円
業務内容 各種機械・設備の設計、製造 / 新商品の開発 / 監理、コンサルタント業務
取扱品目 医療福祉機器、産業用ロボット、省力機械、農業機械、 その他一般機械
設 備 機械加工設備全般 / 板金加工設備全般/ 塗装設備
●設立のきっかけ
創業者;岸征男さんの子供の頃の夢は飛行機の設計をすることでした。視察の際には、ご自身が制作した木製の模型を見せていただきました。
就職はメーカーの研究職となります。のちにそのメーカーは三菱農機と一緒になり、農機具の技術者を15年間勤めました。
そんな時に転機が訪れました。
生後7か月の娘さんが風邪をこじらせたことがきっかけで脳に致命的な障害が残ってしまったのです。医療ミスが原因でした。
深い悲しみのなか、岸さんは幼い娘さんのために人工呼吸器をつくることを決意し独立しました。
●世界中で必要とされる人工呼吸器
人工呼吸器の販売価格は31万円です。“利益をとるわけにはいかない”という理由でほぼ原価で販売しているそうです。
脳に障がいのある場合、運動機能に損傷を受けているケースが多いと言い、呼吸をサポートすることで障がいが緩和されます。損傷した運動機能のためにこわばったようになっている顔が改善されていくそうです。
この製品ができるまで、脳に障がいのある患者さんのいる家庭では両親が交代交代で一日中看病をしなければなりませんでした。毎晩大変なことです。そんな家族に大きな希望となる製品なのです。
そして人工呼吸器の改良には多くの情熱と時間をかけているようでした。
現在では2秒でしめて1秒で戻します。お子さんはもっと早いそうです。交換可能なバネが組み込まれ強さの変化や耐久性を実現しています。
今では権威のある米国の医者に認められ、毎年世界中から東京に関係者が集まります。同社の人工呼吸器は1か月ものあいだ、世界中の多くの方々に指導が行われています。
“営業せずに販売できる”笑いながら岸さんがお話されました。
今では福祉の世界で同社の存在は大きなものとなっているのです。
●事業
同社では約70%の利益を大手自動車メーカーの工場向け自動化関連の製品で稼いでいます。現代では自動車工場は24時間稼働しており、人のいない夜間は自動制御のニーズがあります。同社の製品は無人化に大きく貢献しています。新しい車の製造ラインが立ち上がるごとに受注が来るのです。オンリーワンに近い製品ではないかと感じました。
人工呼吸器をはじめとした医療福祉製品をささえる事業もまた顧客に評価されているのでした。
●経営者として
岸さんは、“40才50才になってやっとわかってきた”、と仰っていました。
社員は製造部門5名、販売部門3名という体制ながら、同社は毎月事業内容を見直しています。常に最新の情報共有や事業の修正、世界の状況、日本の進む方向を社員に伝えているということでした。
社員さんへ話すこととして、“「日本は世界のなかでどうあるべきか」、「日本人としてどうあるべきか」、「日本は世界で尊敬される存在になること」を重視している”という岸さん。想いや考えを伝えることはまさに理念共有になっているのだと思いました。
●最後に
子供の頃からサービス精神が旺盛だったという岸さん。
視察の際、“娘のことは決して悪いことばかりではなかった。結果的には娘が好きなことをさせてくれた。娘のおかげ。娘が与えてくれた多くのことがあった”と言います。
しかし、娘さんは29才の時、突然の心臓発作で亡くなられています。それでも世界中の困った人達へ製品開発への情熱は持ち続け、世界中の人々のためにトップランナーとして最前線を走り続けています。
“障がい者の願いは自立すること。決して手助けをしてほしいわけではない”
岸さんの言葉は忘れられません。
***補足***
この投稿では「法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室」や「人を大切にする経営学会」での経験をもとに毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(人を大切にする経営学会会員;桝谷光洋)
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