No380記憶に残る言葉【株式会社アポロガス;篠木雄司社長(当時)のお話から】

今回は2017年9月に坂本ゼミの東北合宿先としてご訪問した『株式会社アポロガス』さんをご紹介致します。
同社は“元気エネルギー供給会社”。福島に生まれ育った企業として地域と密接につながる恩返し会社です。
2017年3月の第7回日本でいちばん大切にしたい会社大賞では審査委員会特別賞を受賞。
現在はアポログループ株式会社となっているようなので、「概要」は新しい情報から記載していますが、お話は篠木雄司社長(当時)に伺っています。

 https://www.apollo-group.co.jp/

●概要 (アポロガスではなくアポログループの情報から)
アポログループ株式会社
設立年月日 2020.1.31
資本金 20,000,000円
売上高 29億円
グループ企業 6社9事業
従業員数 80名
代表取締役社長 相良元章
所在地:福島県福島市栄町6-1 エスタビル8階
事業内容:グループ会社の経営管理並びにこれらに付帯する業務

●沿革(抜粋)
1971年 6月 飯坂アポロガス株式会社設立、事業所を飯坂町湯野字千刈田に置く
1971年 6月 篠木勝司 代表取締役社長に就任
2007年 6月 篠木雄司 代表取締役社長に就任
2020年 1月 アポログループ株式会社設立
2021年 7月 株式会社アポロガス創立50周年

●“元気エネルギー供給会社”に育てた篠木雄司元社長
篠木雄司氏は地元の銀行に勤務後、父である篠木勝司氏が中心となって設立したアポロガスに30才で入社。2008年45才のときに社長就任されました。
大学時代にパイロットの免許を取得するために留学先したアメリカで体調を崩した際に偶然出会った牧師さんに親切にしてもらった経験から、この恩を返せる人間になろうと心に決めたそうです。

●採用方針
特に東日本大震災のあとに新卒採用を積極化していますが、その方針は明確です。
“人の生きる目的は回りの人を幸せにすることという価値観を共感できる人”です。
以前アインシュタインが来日したとき、ある学生の“人は何のために生きているのですか?”という質問にアインシュタインが答えた内容です。同社では頭の良い優秀な人財であっても自分中心の人は採用しないのです。

●ユニークな新人研修
同社の資料には50日間、150研修、100本の論文とありますので、単純計算で一日当たり3研修・2論文(報告書)のボリュームは想像を超えた充実の研修です。
多種多様な研修内容に関しては、採用に望む学生の覚悟を確認の上、採用活動にはいります。半数以上の学生は敬遠するそうですから、熱意や理念共感度は日本中見渡してもトップレベルではないでしょうか。
150本の研修名一覧が手元にあります。変わったものや驚きのタイトルも多くみられます。しかし、 “個人のキャリアの8割は予想しない偶発的な事象によって決定される”とし、その偶然を計画的に設計して自分のキャリアを良いものにしていこうという考え方に基づいて考え抜かれた内定段階からの新人研修なのです。(「計画的偶然性理論」スタンフォード大学 ジョン・D.クランボルツ教授が提唱したキャリア理論)。
学生が多くのインプットの中で予期せぬ状況に戸惑いながらも同期や先輩社員、地域の人達に繋がりながら自己を見つめ直し社会人の第一歩としてスタートするにはこれ以上ないほどユニークで100%フルパワーをそそがなければならない本気の研修だと感じました。研修事業としても成り立つのではないかと感じました。

●40年前の恩返し
拝啓 四十年前の駆け出し記者様へ、という書き出しで始まる同社の全面新聞広告があります。2011年7月1日付けで福島民報の新聞に掲載されました。
この全面広告のちょうど40年前、小さなLPガス販売会社4社が合併協業してアポロガスの前身が設立された日です。設立時の熱い想いを聞いたある新聞記者が、“設立当初はお金がかかるから”と同社を応援する記事を無償で書いてくれたと言います。“ずっ~と先に会社が大きくなって余裕ができたら新聞に大きく全面広告でも出してもらえればいいから”
その約束は40年の節目に果たされたのでした。
ちょうど東日本大震災の影響が色濃く、福島の町は原子力発電所の大事故に翻弄されていた時期です。そんな中、同社の篠木社長(当時)は40年前の恩返しとして、“元気エネルギーを供給し続けることを宣言する”広告を掲載したのでした。まさに恩を大切にする同社の姿でした。
そして当時記事を書いた新聞記者は40年後に同社の社長になっていたということです。

●最後に
福島県は東日本大震災によってもっとも翻弄され続けている地域だからこそ、元気を発信し続ける同社の姿に感銘を受けるものが多くあります。そして理念共有型の採用や人財育成の質と量は多くの企業に参考となるものです。同社社員の一人一人の力は計り知れないと感じました。
篠木社長(当時)の“社員は社内では育てられない。社員は地域で育てられる。育ててもらっている”というお話が印象的でした。

***補足***
この投稿では「法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室」や「人を大切にする経営学会」での経験をもとに毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(人を大切にする経営学会会員;桝谷光洋)

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