社員を大切にする目的
先日、電車の中で中小企業の経営者らしき初老の人が、同年代の方(多分友人だと思われます)と話しをしていました。「最近人が採用できないからって、色々な福利厚生をしたり、初任給を上げたりしているじゃない。でもさ、いくら努力したって、辞めちゃうんだよ、結局。」と愚痴をこぼしていました。この方が、どのような制度を採用しているのか、辞めてしまう社員は、どのような理由で辞めてしまうのか、その話からはよくわかりませんでした。
しかし、その方の姿勢は、この会話から垣間見られました。
最近、人手不足ということもあると思いますが、「人財」ということばや、「社員優遇制度」の話しや記事を目にすることが多くなりました。社員を大切にする姿勢自体は、喜ばしいことです。
しかし、目的が違うと、結局、その結果は違ってきてしまうと思います。
人を大切にする経営では、「企業経営で一番大切なことは、社員やその家族をはじめとした関係する人々の幸せの追求・実現」であるとしています(「いちばん大切にすべきことをいちばん大切にする経営」人を大切にする経営学用語事典より)。
つまり目的は、社員(及びその家族)の幸せの追求・実現なのです。目的が「社員を辞めさせないこと」≒「その結果、会社が儲かること」となってしまっているということは、会社の経営維持のための手段として社員を優遇するということになります。
そのような姿勢は直ぐに社員に見抜かれてしまいます。
もちろん、社員とその家族を大切にした結果、会社経営が持続し、多くの社会貢献ができることになりますが、それはあくまで結果です。
電車の中で聞いた愚痴は、目的を見失っているから出てきてしまった愚痴なのだと思います。
禅の言葉に、「刻石流水」という言葉があります。受けた恩は石にきざみ、施したことは水に流すというような意味です。
社員が会社のためにつくしてくれてた事は、感謝して、心の中の石に刻み込み、社員を大切にするために実践してきたことは、水に流して忘れるという姿勢が経営者には求められるのだと思います。
「刻石流水」の心を大切にしたいと思います。
(学会 法務部会 常任理事 弁護士 山田勝彦)

コメントを残す