定年退職後の(高齢者)有期雇用と給与
定年退職後の有期雇用された従業員の給与は減額されてしまうのが一般的です。
その基本給与額は、退職前の給与の60%~70%程度の会社が多いと言われています。
これは、雇用保険の高齢者雇用継続給付金(改正前)が60歳時点(定年時点)の賃金と比較して、75%未満に減少した場合、低下率に応じて最大15%まで支給されていたことから、60%+15%=75%として、75%を目安に60%までであれば、ギリギリ違法ではないと考えられていました。
そして、この定年後の再雇用の従業員の同一労働同一賃金が争われた名古屋自動車学校事件では、地裁、高裁が60%を下回る場合には不合理であると判断し、60%の目安に一定の裁判例としての基準を与えていました。
しかし法改正がされ、2025年4月1日からは、61%以下になった場合に、最大賃金の10%を支給するということになりましたので、下限が51%でもいいのではないかと考える見方が出てきました。
また前述した名古屋自動車学校事件では、最高裁で判断が覆り、60%には根拠はないとしました。
最高裁は、日本のような年功序列の雇用においては、基本給の中に、勤続年数に応じて額が定められる「勤続給」、職務内容に応じて額が定められる「職務給」、職務遂行能力に応じて額が定められる「職能給」の性質が合わさっているので、この点を分析する必要があるとして高裁に差し戻し(高裁でもう一度、この点を判断するよう判決すること)しました。
本年(2026年)2月26日にこの名古屋高裁の判決が出ました。
名古屋高裁では、名古屋自動車学校の給与規程では、正社員の基本給は、勤続給や即納休の性格は小さく、職務給の割合が高い。定年退職後有期雇用の社員の基本給も職務給としての性格があり、これは正社員と同じであるとしましたが、結論としては、「若年者の基本給を大きく下回ることは不合理」とするのみで、結局退職前の給与の55%、57%となるよう判断され、前の60%基準よりも低くなってしまいました。
人財難の中、限られた人件費をどのように分配するのかは、経営の課題です。しかし、人を大切にする会社では、定年時の基本給を定年後の再雇用の場合にも据え置き、減額しないという方針を徹底する会社もあります。
定年退職後の再雇用社員も、まだまだ若く、気力もあり、体力もあり、何より経験があることから相応の働きをしています。もちろん、定年退職後は勤務日数を減らしたり、時間を減らしたりて、仕事以外の時間に充てたいという方もいらっしゃいます。その分給与が減るということは本人も納得のいくことだと思います。
従業員は、いずれ皆、定年退職を迎えます。定年退職後の生活の安心に目を向けることも人を大切にする経営では重要なことだと思います。
(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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