ノーベル平和賞ユヌス氏との面談

昨日、ノーベル平和賞受賞 ムハマド・ユヌス氏(バングラディッシュ)と意見交換の場を、坂本ゼミの黒沢さんの思いが叶い、実現した。ユヌス氏は、グラミン銀行の元総裁で経済学者でもあり、実務面と学問の面の両方を兼ね備えた非常に、わかりやいお話でした。また、ノーベル受賞者ですので、普段の視察以上に、当初、少し緊張していましたが、非常に、気さくで、穏やかな方でした。

最近、日本でも知られるようになったマイクロファイナンスは、簡単に言うと、貧困者向けの「小口(マイクロ)金融(ファイナンス)であり、マイクロクレジット(小口融資)のほか、マイクロインシュアランス(小口保険)など、様々なサービスです。貧困緩和と事業収益の両方を追求していることが挙げられます。当時の一般の銀行は、担保や客観的な信頼がある富裕層のみに貸付を行っていました。貧しい人びとは、自分の仕事に必要な少しのお金を得るために、法外な金利にもかかわらず非合法な高利貸しを頼ることしかできない状況だったのを、貧困者にお金を貸すことで、彼らの自立をサポートし、貧困の削減という社会的課題の解決に貢献するためのアプローチをしたのです。

ユヌス氏が総裁を務めたグラミン銀行では、銀行員が毎週集会を開き、お金の使い道や返済の計画について個別にアドバイスを行ない、貧しい人びとは、具体的な方法を知り、借りたお金を元に、家畜の飼育や、食料品の販売などを営み、自らの手で生活の水準を上げていくことで返済が可能になり、貧しい人たちも信頼できる借り手に育てていくことになりました。実際、グラミン銀行の返済率は、98%に達しており、担保がなければ焦げ付きが多くなるといった常識を覆し、貧困層の生活の向上と、事業収益を両立させることに成功しました。今では、多くの発展途上国で、マイクロファイナンスは広がっています。そして、、融資と返済のサイクルを繰りかえすことにより、事業の持続可能性という経済的課題をクリアしているのです。

ユヌスは、現在の資本主義が、人間について利益の最大化のみを目指す一次元的な存在であると見なしています。これに対して人間は多元的な存在であり、ビジネスは利益の最大化のみを目的とするわけではないとユヌスは主張します。ソーシャル・ビジネスは、ユヌスは、利益の最大化を目指すビジネスとは異なるビジネスモデルとして、「ソーシャル・ビジネス」を提唱しました。ソーシャル・ビジネスとは、特定の社会的目標を追求するために行なわれ、その目標を達成する間に総費用の回収を目指すと定義しています。また、ユヌスは2種類のソーシャル・ビジネスの可能性をあげています。一つ目は社会的利益を追求する企業であり、二つ目は貧しい人々により所有され、最大限の利益を追求して彼らの貧困を軽減するビジネスである。

ここまでは、一般的に言われている内容で、詳しくはユヌスさんの書籍を、是非、読んで下さい。
ソーシャルビジネス革命

さて、1時間強といったいった短い時間でしたが、考えさせられることが多々ありました。
ユニクロや雪国まいたけ等の日本の企業が、ソーシャルビジネスに参加しており、徐々に機運が高まっているのは嬉しい限りです。
ところで、ユヌスさんの言うソーシャルビジネスと、一般的なビジネス法人、さらに、NPO法人との違いですが、何故、ソーシャルビジネスでなくてはならないかと言う点について、ユヌスさんは、持続可能性を一番に強調されました。
社会性を考えないと環境その他を犠牲にしてもまで、利益追求が行きすぎる可能性があります。NPO法人は、補助金頼りで持続性が低いとのことです。そして、ソーシャルビジネスを実現するには、アイデアが必要であると言われました。確かに、ユヌスさんがおっしゃるような組織のあり方は、理想的です。

私自身、それぞれの組織体が、実際は、共存することになるし、また、そのメリットもあると思います。しかし、その根底に、社会性が必ず必要になると思います。社会価値を生み出さない企業は、存在意義自体が問われます。しかし、一方、経済的には成り立ちにくいが、社会では問題解決しなければならないことがたくさんあり、NPO法人の活躍の場もあります。そして、社会性を兼ね備えた企業と、補助金に頼らず知恵を出し活動できるNPO法人の両方を、実現するソーシャルビジネスは、今後、追求していく組織体の一つのあり方として、多くの企業がその思想を取り入れていく必要姓を感じます。

ユヌスさんと坂本ゼミ生との意見交換会の後、ユヌスさんの講演が行われた赤羽会館へも足を運びましたが、バングラディッシュの方が数多く集まり、ユヌスさんは、在日のバングラディッシュの方々に、熱狂的な歓迎を受けているのが伝わりました。

是非、坂本ゼミ主催で、ユヌスさんをお呼びして、さらに、深いお話をお聞きしたいと改めて感じました。

(坂本ゼミ火曜日担当 藤井)

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