パナソニックよ、それでいいのか?

昭和初期の世界恐慌下、電機業界でも、数多くのメーカーが倒産しました。松下電器も売上が半分以下に急減、創業以来の深刻な事態に直面しました。

2人の幹部が対応策をもって訪ねてきたそうです。
「この危機を乗り切るためには従業員を半減するしかありません。」

報告を聞き終えた幸之助は、しばらく沈思して語ったといいます。

「なあ、わしはこう思う。松下が今日終わるんであれば、君らのいうてくれるとおり従業員を解雇してもいい。けれども、わしは将来松下電器をさらに大きくしようと思っている。だから、1人も解雇したらあかん。会社の都合で人を採用したり、解雇したりでは、働く者も不安を覚えるだろう。大を成そうとする松下としてはそれは耐えられないことだ。みんなの力で立て直そう。」

この決断は従業員を奮い立たせ、社内に垂れこめていた暗雲は瞬時にしてふきとびました。
「さすがはおやじさんだ。みんなで力を合わせてがんばろう。」
そうして全員の懸命な努力が実を結び、たった一人もリストラすることなく未曽有の危機を乗り越えていったのです。

各マスコミの報道によれば、12年度中をメドに、パナソニックは本社の従業員約7000人を半減する方向で調整を始めたということです。

世界恐慌の頃と現在、もちろんさまざまな点で環境は同じではありません。ですが、この先どうなってしまうのかという先行き不透明な不安感はまったく同じであったろうと思うのです。

それでも、今回のこの真逆な決断をみていると、これが同じ企業なのかと目を疑いたくなってしまいます。パナソニックの経営陣は、リストラを中心に収益のV字回復を何としても図ると宣言しています。それだけのリストラをすれば収益は回復することでしょう。しかし、それは一時的です。それが永続の答えでないことは明らかです。

幸之助が“今日終わるなら”大量リストラしてもいい、といった示唆がとても重く感じます。目先の利益にとらわれると企業に死が早く訪れるということを幹部に対して暗に戒めているのです。

その会社の企業文化、DNAは苦しいときこそ意識したい生命線です。パナソニックは、ぜひ創業者の原点に立ち戻り、会社は何のために、誰のためにあるのか、再考してほしいと切に願うばかりです。

参考「不況における松下幸之助の研究」
http://konosuke-matsushita.com/staff/sato/manuscript/014.pdf

小林秀司

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