リンカーン

M2坂東です。

観てまいりました「リンカーン」。

ダニエル・デイ・ルイスがアカデミー賞の主演男優賞を受賞したことでも話題となったこの作品、
単なる娯楽作品ではなく、本当に考えさせられる映画であり、
またアメリカ史についての理解を深めさせてくれる面もありました。

舞台はご存知、南北戦争真っ最中のアメリカ。
奴隷解放宣言はなされたものの、それが必ずしも正当な法的拘束力を有しないものだった、
というだけでも私には驚きでしたが、奴隷制廃止を法的に有効なものにすべく、
この作品の中でのリンカーンは、とにかく違法すれすれの議会工作、政治工作を繰り広げます。

南北戦争の終結が目前にせまっているのが誰の目にも明らかになる中、
戦争終結前に奴隷制廃止に関する「合衆国憲法修正第13条」を議会下院で通過させるため
停戦交渉を求める南部からの使者までのらりくらりとかわしながら
決議を棚上げしようとする反対勢力を最後まで審議にとどめておく主人公のやりとりは、
手法としての正しさを求めるべきなのか、結果としての正しさがあればいいのか、
その善悪の判断を超えて胸に響くものがありました。

反対陣営の取り込み手法も本当に露骨極まりないものだし、
きれい事だけではない様々な手段の上でなされた歴史的な決議の先に、
リンカーンはどのような世界が築かれていくことを夢見ていたのでしょう?

この合衆国憲法修正第13条が成立したあとも、なぜアメリカに人種差別が残り、
その後のおよそ100年にもわたる公民権運動につながっていくこととなったのか、
その一端も、この作品で理解できたように思います。

南北戦争を経済面からみると、
綿花を中心とするプランテーション農業の経済圏である南部と、
工業を中心とする経済圏である北部の戦いであり、
また綿花が主としてヨーロッパに輸出されていたことから南部は自由貿易を主張し、
北部は進んだ英国等から自国経済を守るため、保護主義を主張していました。
奴隷解放とは言っても、単にきれい事だけではなく、
このような経済的な対立が大きく影響していたはずですが、
その点についてのつっこみは残念ながらありませんでした。
アメリカ人にとってはあたりまえすぎるのかな?

南北戦争の終結は1865年、そこで不要になった大量の兵器は幕末の日本に輸出され、
幕末の戦闘の主力兵器となっていく、というような話が「八重の桜」でも描かれていますが、
このようにちょっと世界史のお勉強的な要素を含んだこの映画、
その歴史的な面まで含めて楽しめる方向け、人を選ぶ映画と言えるかもしれません。
上映時間が2時間半でちょっと長いのも残念、
内容的にも前半を中心にあと20分は詰められるんじゃないかなと感じました。

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「リンカーン」への1件のフィードバック

  1. 坂東さん
    こんにちは!
    この映画気になっていました。
    リンカーンが生きていたアメリカの歴史を多少なりとも学んでから観るとより面白そうだと思いました。
    情報ありがとうございます。