靴下バカ一代【読書メモ】

本書は「靴下屋」などの靴下専門店を全国展開するタビオ株式会社(東証2部)の創業者の越智直正(おち・なおまさ)氏の著です。1939年愛媛県で生まれた著者は、中学卒業後、大阪の靴下問屋に丁稚奉公。68年に独立し。84年に「靴下屋」1号店をオープンすると同時にフランチャイズチェーン展開を開始します。

同社は、バブル崩壊以後、同業他社が次々と中国へ生産拠点を移す中、メード・イン・ジャパンにこだわり、圧倒的高品質と独自の生産・販売管理システムを構築します。2016年2月期の業容は、売上高166億9600万円、経常利益7億7100万円。社員数266人(連結)です。

中学を卒業し、大阪に丁稚奉公を始めた越智氏は、働き始め1週間で「中卒では通用しない」、「自分はついていけない」と思い知らされます。越智氏は、密かに中国古典を毎晩読み始め、18歳で『孫子』の全編を暗記するほか、『史記』『三国志』『論語』などを読み込みます。この中国古典の教えが越智氏の生き方、経営の軸となります。

越智氏の語録をご紹介します。
・自分の人生は自分で切り開くよりほかに道はない。
・創業時、取引してくれる工場を確保するため「20日締めの月末払い」を打ち出した
・伸び縮みしないものさしを持て
・太陽を南や北に沈めることができないように、道にかなわぬことをすれば、権力を手にすることがあっても、必ず失脚する
・僕が価格競争を徹底的に避けてきたのはこの教えのためです(『孫子』を引用後)
・丁稚時代の対象に言われこと「ええか越智、よく心得ておけ。お前に起こってくる問題は人の生き死に以外は全部、お前が解決できるから起こったんや。だからお前が本気になったら解決できる。お前が逃げ腰になっとるから解決できないんや。お前が起こした問題で、お前に解決できない問題などあるか」
・人の上に立つ人間ほど、物事の原因、深いところを見なければなりません。(中略)何かうまく回らないときには、相手を責める前に我が身を振り返ってみることです。
・正邪でものごとを判断する
・運がいい人とは良いことを寝ても覚めても思い続けた人
・仲間(取引先)の利益をまず優先せよ
・運命共同体ではなく、理念共同体
・わずかな差の積み重ねが大きな差を生む
・なんだかんだ言うても経営は真剣にやらないけまへん。社長が一所懸命にやっとることがね、社員の一番励みになりますから。
・全力で生きましょうや

本書の中で紹介されている倒産の危機を何度も乗り越えてきた越智氏。大阪商人の教えと、中国古典が、織りなす骨太の経営論は、とても触発される1冊でした。

今日も皆さまにとって、素晴らしい一日になりますように。

春木清隆

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「靴下バカ一代【読書メモ】」への1件のフィードバック

  1. 春木さん
    私も好きな社長です。
    創業時、取引してくれる工場を確保するため「20日締めの月末払い」を打ち出した
    これは凄いですね。
    知野 進一郎