まるおか、それは奇跡の店

「商業界」笹井編集長の12月4日日曜日のブログより

群馬県高崎市のまるおか、それは奇跡の店

2016年12月04日(日) 06時00分51秒NEW !
テーマ:良い店、好い人

長らく小売業を取材してきた私にとっても、群馬・高崎市にある小さなスーパーマーケット「まるおか」は驚きの店でした。

たとえば、一般的に粗利益率の高いスーパーマーケットは共通して、強い自社企画商品、つまりプライベートブランドを持っているものです。

成城石井しかり、紀伊國屋しかり、いかりスーパーしかり、そして私にとって親しい福島屋もまたしかり。

ところが、まるおかの棚にプライベートブランドはほとんど並んでいません。
同社の丸岡守社長ほどのプロの目利きなら、きっと見事なプライベートブランドがつくれるはず……にもかかわらず。

そもそも、小売業がプライベートブランドに取り組むとき、そこには大きく二つの“目的”があります。

一つは、既存のナショナルブランドにはない独自性と付加価値をつくりだすためです。

そういう商品にお客さんは惹かれ、繰り返し店を訪れくれるのです。

もちろん、そのためには絶えざる改善への取り組みが欠かせません。

福島屋の商いを見ていると、福島徹さんが改善にどれだけの熱意と時間と手間をかけているかがよくわかります。

もう一つは、高い粗利益率を得るためです。

中間流通を省くことができ、ナショナルブランドには必須である大量の広告宣伝費も不要です。

これを“流通革命”といった時代もありました。

これら二つの目的をもって、高品質かつ低価格な商品をつくりだし、広くあまねく消費者に“福音”を届けることがチェーンストアの大義でした。

私も駆け出しの頃には毎月通って学んだ、故・渥美俊一さん(日本リテイリングセンター・チーフコンサルタント)は、プライベートブランド開発を通じて小売り売価を従来の2分の1とすることを宣言、チェーンストア経営者たちに大号令をかけたことを思い出します。

この指令を実践し、30期連続の増収増益という成長を続ける企業がホームファニシングストアのニトリです。

しかし忘れてはならないのは、食は工業製品ではないということ。

自然という偉大なる存在に寄り添い、折り合いをつけつつ育んだ素材を、時間と手間をかけてようやく得られるのが本来の食品です。

そのどこかに無理を通せば、しっぺ返しをくらうのは、それを食する私たちなのです。

先ごろオーガニックライフスタイルエキスポを主催した、徳江倫明さんにわたしは教えていただきました。

それなのに、多くのスーパーマーケットはややもすると、開発の途中において志を無くしてしまうように思えます。
いえ、最初から志を携えていない店すらあります。

いま、プライベートブランドは価格競争の“手段”にされ、お客に最も近い場所にいる利点を生かして“お客の暮らしに資する”という目的が、いつの間にか忘れ去られているのではないでしょうか。

たとえば、日本最大の流通チェーン、イオンのプライベートブランドのトップバリュ。

彼らの競争力の源である、安値と利益の二兎を追う“夢の商品”として誕生したのが1994年のことでした。

前身のジャスコまで含めると、「良い商品をより安く提供する」ことを旗頭に1974年からの歴史を持ちます。

しかし、この直近2年というもの売上高は減少、合併や提携によりトップバリュを扱うことを強いられた企業からは、送り込まれてくるトップバリュに対する不満の声が聞こえてきます。

「過去には粗製乱造と言われかねない拡大があった」と、イオン幹部自身が告白していることを、私たちは他山の石としなければなりません(11月7日付 日経MJ)。

手段を目的としない、これが教訓です。

さて、そろそろ私が抱いた疑問について、丸岡社長に答えてもらいましょう。
なぜ、プライベートブランド開発に慎重なのか?

「安易にプライベートブランドをつくれば、今度はそれを売ることが最優先されるようになります。そのときに、もっと素晴らしい商品と出合ったらどうしますか? 店はお客様のためにあることを貫くなら、生半可なプライベートブランドは売れなくなるはずです。それが私の商いです」

奇跡のスーパー、まるおかについては昨日、一昨日とブログで紹介しています。

詳細は商業界2月号でリポートします。

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