人を大切にする経営学に関する研究奨励賞受賞に際して

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今週の巻頭言

人を大切にする経営学に関する研究奨励賞受賞に際して
     
              産業技術大学院大学産業技術研究科 特任准教授
              多摩大学大学院経営情報学研究科 客員教授
                               亀井 省吾

去る3月21日に法政大学で開催された「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞授賞式にて、図らずも、拙著『障碍者雇用と企業の接続的成長-事業における「活用」と「探索」の考察-』が、人を大切にする経営学に関する研究奨励賞 図書部門最優秀賞を授与頂きました。このような身に余る賞を頂戴できましたのも、坂本先生はじめ皆様のご指導の賜物と感謝している次第です。

当初連絡頂いた時には動転してしまいましたが、よく考えると評価されたのは本の内容であること、その内容こそは坂本先生の教えそのものであることを考えると、少し気持ちが落ち着いて来ました。

思えば、坂本研究室の門を叩いたのが6年前、当初は先生のお話を伺いたいだけの目的で大学院に入学したのですが、その後、博士学位を取得し、現在3つの大学で教鞭を執っています。
先生には、実に様々な会社にお連れ頂きました。その中で特に関心を持ったのは、障碍者の方が活き活きと働く現場を持つことで持続的に成長を果たしている企業群の存在でした。

障碍者雇用と言えば福祉的な視点しか持ち合わせていなかった当時の私にとり、それらの現場と企業群は衝撃であり、そこで何が起こっているのかを知る為に経営学を学ぶようになったと言っても過言ではありません。
ただ、従前の経営学視点からは解明しづらい点も多く、自然と情報学や現象学へ学びの分野を広げていきました。その学際的な成果が博士論文となり拙著となったものです。

当初の研究は現場工程構築に関することを、次に現場の身体知コミュニケーションを、そして、障碍者雇用実践行動が形成した紐帯を基に新事業の種を獲得するダイナミクスを、学術論文として国内外に発表して来ました。
いざ、博士論文をまとめようと、それらを再度読み返した時、これら一連の活動こそが企業の持続的成長に結びつくものではないかとのリサーチクエスチョンを得たのです。

そこでは、通常は難しいとされる「活用」と「探索」の両立が障碍者雇用を通じて成立していました。
それは、障碍者が働くということの困難さと真正面から向き合い、本業の一部として取り組み、持続的な組織を創ろうとすることから生起した奇跡と言えるものでした。そんな奇跡を奇跡として終わらせず一般化し再現可能なものとする為に、学術的な普遍化が必要でありました。

書き終えた時、期せずして論語里仁篇第二章の一文「仁者安仁、知者利仁」が脳裏に浮かびました。ここでいう仁を利他と読み替えて解釈すると、仁者とは無意識自然体で利他の境地に安んじている人、知者とは意識的に利他の実践
応用を試みる人となります。

坂本先生は近著『利益を追わなくなると、なぜ会社は儲かるのか』の中で、マズローが後年、人間欲求の最終段階として自己超越欲求を挙げたことを述べられています。
人は、潜在的に備わっている自己超越欲求を顕在化させることで仁者となる可能性を持ち、その道程として知者としての役割を全うするのではないでしょうか。
本書が、障碍者雇用を実践して企業の持続的成長という応用成果を導く知者の為に、一隅を照らすガイドになれればと切に祈念する次第です。

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