私が坂本ゼミを選んだ理由

「あなたの志は何ですか?」
 私は、2015年からほぼ毎朝、自宅近くの松陰神社(東京都世田谷区)=写真=に参詣してきました。冒頭の言葉はご祭神の吉田松蔭先生が私に問いかけてきたフレーズです。私の坂本ゼミへの道のりの発端は、この問いかけでした。
 なぜ世田谷に松陰神社があるのかと疑問に思われる方もいるでしょう。安政の大獄(1858)で松蔭が刑死された後、弟子の高杉晋作や伊藤博文らが毛利家別邸があったこの地に松蔭を改葬、その後、松蔭神社が創建されたのです。
 実は、私の自宅近くには、当時の幕府大老だった井伊直弼が葬られている井伊家菩提寺の豪徳寺もあります。明治維新への起動ボタンを押した2人が奇しくも近くで眠っているのです。
 2015年から参詣を始めたきっかけは、少し前から仕事の余裕が出てきたこともあって、愛犬の散歩を朝の日課にしたことです。松蔭神社は神社仏閣では珍しく犬の散歩もOKでした。決め手は、松蔭の妹が主役のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」が2015年から始まったことです。「あなたの志は何ですか」は、大河ドラマで松蔭が発した言葉でした。
 私は当時、56歳。60歳の定年退社によってそれまでの自分は「サドンデス」(突然死)になる、その先を含めた「人生100年」をどう生きるか、について思案中でした。このため、松蔭の言葉がパワーフレーズとなったのです。
 毎日の参詣で松蔭の志を学びました。平和に慣れガバナンスが緩んだ幕藩体制のままでは列強に日本が蹂躙されるおそれがある、松陰の志を継いだ高杉晋作らは、身分を問わず、志ある在野の人々を頼りにして、立ち上がります。わずか80人余りの「功山寺挙兵」でした。
 私は新聞社で34年、世の中、特に経済や経営をウオッチしてきました。「失われた20年」の間、大企業は、内部留保の積み増し、非正規社員の拡充・人件費の削減を続けるばかりで、結果として日本のGDPも成長しませんでした。
 大企業の経営レベルの不祥事とも言えるニュースが多発しており、大企業の経営者の間には、してはいけないことをする、すべきことはしないというモラルハザードが蔓延しているのではないか、と疑われる事態でした。
 そこで、リーダーシップを発揮しやすいオーナー経営の間で正しい経営が広がることに期待をかけて、正しい経営を学び、正しい経営を広める経営コンサルタントを志すことにしました。第一歩として2016年に法政大学大学院イノベーションマネジメント(IM)研究科MBA特別プログラムへ進み、3月にMBAと中小企業診断士登録資格を取得しました。
 この間、政策創造研究科の坂本光司先生の「新産業創造論」を受講、さらに修士論文に絡みインタビューをさせて頂きました。「強く生きたいあなたへ」などの著書を読み、さらに1時間のインタビューをすることで、そこには私が求める姿があるのではないか、と思いました、それが坂本ゼミに来た理由です。
 坂本ゼミは後1年ありません。しかし、松陰が松下村塾で指導した期間はわずか2年。話は飛びますが、空海に「遍照金剛」の灌頂を授けた中国・青龍寺の恵果が空海を指導した期間は半年です。私は「坂本ゼミ最後の研究生」として受け入れられたことに感謝しつつ、短い期間ながらも坂本先生の志と行動をしっかり学び、志を実現していきたいと思っています。                                                        研究生 神原哲也                 

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