2年前、伊那食品工業、塚越英弘専務の話

2年前、伊那食品工業、塚越英弘専務の話。

初めて参加した中部経営塾で、【いい会社をつくりましょう】と題して伊那食品工業株式会社、塚越 英弘専務取締役の講演を拝聴した。

・長野県伊那市に3万坪を持つ本社、毎朝8時20分の始業前の30〜40分前から全社員が清掃を行う。
 土日には自主的に50〜60人が清掃にくる。強制でないので、まったくしない人もいるようだ。

 掃除の目的
 気づきの訓練、毎朝、行うことで気づきがある。
 みんなが、考えることを大切にしている。
 気づきがないと成長がない。

・毎年、15名程度の新卒の採用を行っている。
 10名枠の大卒の採用には、昨年は5000名、今年は4000名の応募があったと言う。
 しかも、塚越会長の本に目を通してきている応募者ばかりだ。

 塚越専務は、応募者とのフィーリングで選抜していると言う。
 昨年の「人を大切にする経営学会」の視察では塚越会長は伝統の性格テストのようなものがあると言っていた。

・年輪経営 役職は多少違うようだが、年功序列だ。
 毎年、給与が2%ずつ増える。
 2005年の寒天ダイエットブームの時、不自然な売上増加により3年間、減収となった。
 この時も塚越専務始め幹部は1%の昇給を考えていたが塚越会長の2%でに、落ち着いた。
 寒天ブームの時の昇給も2%だが特別賞与は役職に関係なく同額が支払われた。

・大事にしていること
 社員みんなでやること。
 塚越専務、例を挙げた。この会場の机の整理を前席の5名で行うよりも、会場の全員で行った方がつらくなく楽しい。

 毎年6月第1土曜日にカンテンパパ祭りを公開して行う。屋台に食べ放題・無料で去年は1万3千食、今年は1万5千食がなくなった、
 1200台の駐車場を用意したが、1時間で満車になったという。

・オフは秋から冬にかけて。社員旅行の委員会が活動を始める。みんなでやって自分たちで考える。
 社員旅行、2年毎に海外、海外がない時は2泊3日の国内旅行。10数班に分かれて食事の1回だけは全員一緒だが後は自由だ。

 宴会の席順はくじ引きだ。塚越会長の隣の席に新入社員が座ることもある。

 旅行、レクリエーション等は、役職等が関係するとつまらなくなってしまう。だから、みんな平等が全員参加を呼ぶ。

・トップ、経営者は社員に考える場を創ること。
 自主的な行動は、トップ・経営陣が任せることが前提だ。

・塚越専務からも塚越会長が大切にしている二宮尊徳の話があった。
 座右の銘の「遠きをはかる者は富み、近きをはかる者は貧す」。

 もう一人、出光佐三の名前と1969年に発刊された「働く人の資本論」も挙げられた。数年前に再販された本だ。
 戦後、出光興産の会社も焼け野原、何も残らず多額の借金だけが残った状況で、1000人の社員の雇用を続けた等、塚越会長の考え方・生き方に影響を与えたようだ。

 資産家の日田重太郎が佐三に大金を貸すのではなく、もらってくれと言った。二つの条件を付けた。
 �家族を大切にして欲しい �自分の主義主張を最後まで通して欲しい。

 また、神戸高商の水島銕也校長が学生を自分の子供のように接する姿勢から、大家族主義に対する確信を深めたと言う。こんな佐三の考え方・生き方が参考になったようだ。

 塚越専務、もう1社挙げられた。
 数年前に会社更生法を申請し長瀬産業に吸収された「林原」。研究開発に力を入れていたが、会社衰退の原因は人を大切にしなかったからか。

・HPには掲載していないが、毎年、行動指針がある。
 処遇は一流、仕事も一流。実のある言動を、等、年初に示され意味を考えると言う。

・会社の目的は、社員が幸せになること。
 会長と専務と余り話さないようだが、お父さんの会長を尊敬している。
 会社がやっていることは正しいと言う。違いがあるとすれば手法ではないかと言う。

・急成長し過ぎた場合は?の質問に対し、技術革新や新薬の開発等の場合は必要なもので良いとの回答。
 我が師匠、法政大学大学院、坂本光司教授も同様のことを言われる。世のため人のため、正しいこと、自然の流れであればいいことだと思う。
 即ち、不自然な流れ、ブームに乗るのは良くないことだと思う。

・目標がないとイメージがてきないとの質問に対して
 スポーツの目標とは違う。
 結果として、1円でも売上が多ければ良い。何か成長した実感があれば良いのではないかとのこと。

・企業の責任 
 雇用を創り続けること。

・誰が言うかが大切なこと。
 約束を守らない。口だけで行動は起こさない。言っていることとやっていることが違う。
 そんな人の言うことは聞かない。

・安心できる会社
 毎年確実に少しずつ給与があがる。安心して楽しく働ける。
 逆に、会社が倒産するかもしれない。クビになるかもしれない。給与が下がるかもしれない。
 安心して働けない。

 2年前にコメントをいただいた。「伊那食品工業、素晴らしい会社ですよね、そのような環境なので、20代の既婚率が8割、そのうちマイホーム購入率が7割とカンブリア宮殿で紹介されました」と。晩婚化、結婚しない。安心がない会社、社会が原因だ。

豊田章男社長が師と仰ぐ塚越会長^_^
豊田の関連会社のトップも訪問している。社員が33万人いるトヨタ。関連会社の社員総数もハンパではない。日本が大きく変貌し始めている流れもある^_^

日焼けした笑顔で話され、10人を超える質問者に丁寧に回答される塚越専務、爽やかだ。

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法政大学大学院 坂本 光司ゼミ、4年目の私、今月初めて、初めて、夏合宿、視察で訪問させていただく。
70歳の坂本教授、来年、退官する。2008年に発売した、【日本でいちばん大切にしたい会社】1の日本理化学工業さんの次に紹介された。原点回帰の合宿でもある。

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