「日本でいちばん」のランドセルメーカー「協和」①「強くて優しい会社」に挑む

 坂本光司教授の『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)シリーズ(2008~2016)で掲載されている会社は31社だが、日本経済の中心地である東京に本社がある会社はわずか2社しかない。
 そのうちの1社が2013年発行のシリーズ4で、坂本教授が「限りない優しさがあるからみんな嬉々として働くランドセルメーカー」と形容した株式会社協和(東京都千代田区)だ。
 私と同じ中小企業診断士でもある今井兼人氏のアテンドで坂本光司研究室の仲間とともに東神田にある同社本社を訪問した。1階のショールームは我々がビルに入る前は薄暗くなっており、入る前に自動で点灯した。これも同社「らしさ」だろう。
 『日本でいちばん』の主役は1921年生まれ、現在数え年97歳の若松種夫社長である。第二次世界大戦のニューギニア戦線で4000人の部隊が壊滅する中、生き残った40人のうちの1人。戦後、1948年にランドセルメーカーを創業した。本では、一人の障がい児のため「肩ひもがないランドセル」を手間暇かけてつくり、健常児向けと同じ値段で販売した、などエピソードを紹介している。
 今回の訪問では、若松秀夫専務(1950年生まれ)から経営の話をお聞きすることができた。当日、若松さんの声はかすれており、「どんどん喋って下さい、リハビリになる、と医者に言われています」と冗談めかしながら、話を始めた。ゆっくりと丁寧な話ぶりで、含蓄がある中身。各論までどんどん公開してくれた。今回を含め、5日連続で詳報する。今回、専務室の皆川京子さんにもお世話になった。感謝したい。 研究生/中小企業診断士 神原哲也 
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株式会社協和 若松秀夫専務講話①(2017年9月22日)
・「株式会社協和日本ホールディングスグループの概要」
 「協和」はカバンの製造卸。売上高は60億円台後半で従業員230人。「協和バック」はカバンの小売り。70店舗あり、売上高は28億円、従業員280人。
・「強くて優しい会社
 いつも「仕事をしていくってどういうことですか」と自問自答しています。青臭いかもしれないですが、働くことの意味を考えています。協和は「強くて優しい会社」を作ることを目指しています。レイモンド・チャンドラーの言うように「強くなければ生きてはいけない、優しくなければ生きていく値打ちもない」のです。
 「強い」が手段、「優しい」が目的です。「強い&優しい」ではありません。手段がいつの間にか目的になってしまわないよう、繰り返してこのことを確認しています。
「強い会社」とはなんでしょうか。「安定して、利益を出せる会社」のことです。
「優しい会社」とはなんでしょうか。従業員・取引先・消費者・社会・地球・環境を大切にする会社です。坂本先生の「5人の人」には株主が入っていますが、協和が大切する人には株主が入っていません。
 協和の株主は、創業家と従業員で、それも協和で仕事をしている人だけです。(つまり株主=社員になっている)。創業当初は取引先など第3者もいましたが、すべて買い戻しました。
 「利益とは何か」
 経営理念は「従業員の知恵と努力で創造した製品とその営業活動の結果 得られる利益のみを利益と考え、これ以外の利益を求めない」です。これは本業以外はやらないということです。株を持たない、不動産を持たない。
(29日アップの②へ続く)
                  
二宮尊徳の言葉「・・・経済を忘れた道徳は寝言」
                  
経営理念で「利益」を定義

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