<ニュースを問う> 障害者の大量解雇(上)
昨日の中日・東京新聞の記事。
多分、業者、福祉は儲かるでやったと思う。
次週の検証を期待したい。
<ニュースを問う> 障害者の大量解雇(上)
2017/10/22 朝刊
パドマが閉鎖した8月31日に、同所を訪れ障害福祉サービス受給者証の終了印を確認する利用者=名古屋市北区で
福祉の理念と、企業現場での現実とのギャップが生み出した深刻な出来事と言えるだろう。
◆就労継続支援A型
「就労障害者69人解雇へ」
八月二十三日、社会面に報じた記事の見出しだ。
働いている障害者たちが「就労継続支援A型事業所(A型)」で大量に解雇された。
身内に障害者がいない人は、自分には直接関係のないことだと思っただろうか。
だが、働く人の誰にとっても無関係ではない。
今は元気でも、パワハラや過労でうつになることは「働き方改革」の道半ばにある今の時代で、珍しいことでない。
元の職場に復帰できればいいが、戻れずに解雇されてしまう可能性もある。
中には、各自治体で精神障害者の認定を受ける人もいる。
このように一般企業での就職が難しくなった人たちの働く場が、大量解雇の舞台になったA型だ。
障害者の雇用問題に詳しい松井亮輔法政大名誉教授(78)は「A型の利用者の四割は精神障害者。うつ病などにより、フルタイムで仕事ができなくなった人の受け皿になっている」と言う。
A型は、二〇〇六年の障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)によってできた制度で、事業所が障害者と雇用契約を結び、最低賃金を保証する。
A型で一日四時間、月二十日間働くと、七万円前後の給料が支払われる計算だ。
そこでの仕事が精いっぱいでも、障害年金を受給し、何とか生活している人もいる。もちろん、一般企業での就労を目指す人もいる。
記事は、株式会社「障がい者支援機構」(名古屋市北区)が経営に行き詰まり、全国で運営していた複数のA型で働いていた人たちが解雇されることを伝える内容だった。
社会での「居場所」と収入を同時に失うのは深刻だ。再雇用の道のりも簡単ではない。
同社が北区で運営していたA型「パドマ」では、箱詰めや土木用品の洗浄など、内職的な軽作業が中心だった。
取材に行くと、知的障害のある息子(22)とその父親(55)がいた。
父親は「パドマが閉鎖していると、息子から電話で聞いてびっくりした。『何が起こったのか?』と。
特別支援学校を卒業し、四年ほど地下鉄で通った。
今後どうするのかはこれから決める」と困り果てていた。
息子は「みんなに会えなくなるのはちょっとさみしい。給料が出ないのは困る」。働く場所を失ったショックが伝わった。
パドマで働いていた男性(46)は、以前勤めていた会社が事業を撤退し、その後の勤務先で心を病んだ。
「ここがあったことで精神的に楽になった。助かりました」。今後は「再就職しても、だめだった時に戻る所がなくなってしまった」と残念そうだった。
パドマで障害者を指導していた従業員によると、経営者の男性とは連絡がつかない状態が続いている。給与も一部が未払いのままだ。
◆事業者には給付金
解雇された人たちの救済に奔走している「きょうされん」(前身は共同作業所全国連絡会)愛知支部事務局長の大野健志さん(46)は「制度的な矛盾がある。
A型に通う障害者は平均月七万円の収入が得られ、満足していた。そこにつけ込み、事業所は障害者を集めていた実態がある。
各地で起こっているのではないか」と指摘する。業者が「障害者を集めていた実態」とはどういうことか。
A型では、雇用する障害者の勤務日に応じて一日約五千円の給付金が国から運営者側に支給される。
障害者の生活支援員や職業指導員の配置や事務費など、運営をバックアップする仕組みだ。
制度上は給付金は障害者の給与に充ててはならないことになっている。
だが、現実には最低賃金を保証できるだけの仕事を受注するのは難しく、同社が経営破綻の状態になった七月下旬、同社の社長から、愛知県と名古屋市に「利用者の最低賃金に見合う作業が得られず、運営が滞った」などと報告があった。
今回のケースで浮き彫りになった問題が二点ある。
まず、運営が行き詰まって事業所を解雇された人たちの救済だ。行き場を失っている人たちを放置してはおけない。大量解雇の事態を想定していなかった制度にも不備がある。
もうひとつは、経営の実態を透明化することだ。運営費として事業所に支給される給付金は、国民の税金だ。破綻した会社は、パドマ以外も含めて約百五十人の障害者を雇用し、概算で毎月一千万円を超える給付金が流れていたとみられる。それらがどのように処理されたのかの説明もなく、行政のメスも入っていないのは、おかしくないか。
障害者大量解雇の現場で、何が起きているのか。引き続き、次週でその実態を検証したい。
(生活部・出口有紀)
コメントを残す