幸福学研究の前野隆司教授

昨日の法政大学大学院 坂本光司ゼミの優秀な後輩の神原哲也さんの投稿。

前野先生のご厚意で来年の人を大切にする経営学会の全国大会は9月15日土曜日、16日日曜日に慶応大学日吉キャンパスで開催される。来年の手帳にメモをしていただきたい。

前野先生の講演は昨年の4月に名古屋でワークショップで聴いた。資料を坂本先生に見せると前原先生が訪ねてきてお会いしていた。

以下、神原さんの興味深い投稿。流石、元新聞記者。

21日(木曜日)は慶應SDMの「幸福学とパターンランゲージの対話」シンポジウムに行ってきた。

は、本題ではないのだが、会場から「幸せの経営学」について聞かれ、「幸せな社員の創造性は幸せでない社員の3倍ある」という研究報告があることなどをあげるとともに、坂本光司教授(法政大学院政策創造科)の「日本でいちばん大切にしたい会社」に言及した。

 前野教授はこの日、日本レーザー(東京・新宿)の近藤宣之社長に会った時、「社員が幸せだと、いざという時に団結するが、社員が幸せでないと、いざという時、(問題を起こしている大企業のように)会社を去っていく」といった話を明らかにした。

また、2017年ホワイト企業大賞も受賞した西精工(徳島市)では「月曜日に会社に行きたくて行きたくて仕方がない社員が8割いる」とも指摘した。

 本題に戻ると、前野SDM(システムデザインマネジメント研究科)教授が幸福学、井庭崇SFC(湘南藤沢キャンパス)准教授がパターンランゲージについて講義、その後で両氏が対話する予定だったが、井庭准教授が体調を壊して代役(修士課程の学生2人)が穴を埋める形になった。詳細はそれぞれ著書にある。またwebでは以下が参考になりそうだ。

前野教授の場合はYouTube
https://www.youtube.com/watch?v=VcAGIl3WBK4

井庭准教授の場合は、スライドシェア
「パターン・ランゲージワークショップ」
https://www.slideshare.net/takashiiba/30wilson-learning-worldwide-global-
 ここではごく簡単に骨格をお伝えする(写真・コメントも参考にしてほしい)。

 まずは前野教授の幸福学研究のきっかけ。もともとキヤノンの研究者。カメラの設計の変数に、幸せが入っていないことに気づき、幸せの設計をしなければいけない、と思ったのがきっかけだ。

 研究としては幸せの「因子分析」を行って、4つの幸せの因子を見つけた。幸せには、長続きしない幸せ(地位財=所得、地位、物財=他人との比較)、長続きする幸せ(非地位財=良質な環境、健康な体、自己肯定感など)があり、4つの因子が揃えば幸せが長続きする。

 4つの因子は「やってみよう」(自己実現と成長)「ありがとう」(つながりと感謝)「なんとかなる」(前向きと楽観)「あなたらしく」(独立とマイペース)。

 このうち「やってみよう」ではドーパミン(喜びや快楽のホルモン)が出てくる。やらされ感があると幸せになれない。「ありがとう」ではセロトニン(愛情や幸福のホルモン)が出てくる。自分の幸せを追い求める(利他でない)と幸せになれない。

 幸福研究の論文は急増しており、様々な研究をあげていた。年齢別の幸福感は、40代の幸福度が底、年寄りは「老年的超越」と呼ばれる幸福感があり幸福度が高い。

 さらに幸福も不幸も伝染する。(伝染するのだから)自分が健康かどうかだけでなく、幸せかどうかも気をつけなければいけない、とも指摘していた。

 一方、「パターンランゲージ」とは、成功事例に潜む共通のパターン(秘訣、経験則)を言語にする手法・言語。パターンとは繰り返して現れる規則性、どういう状況の時、どういう問題が生じやすいのか、どう解決するといいのか、その結果どうなるのかを記述していく。

 「パターン・ランゲージワークショップ」(冒頭に紹介したスライド)では創造的コラボレーションを例に「共感のチームづくり」「レスポンスラリー」「意味のある混沌』など33のパターン(秘訣)名を造語している。パターンの使い方は色々あるがここでは対話など様々な目的で利用できる。

 なお幸福をパターンランゲージ にすることについては今回「対話」はなかったが、前野教授はその可能性があること、さらに今後、具体化を模索する姿勢も示していた。

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