(波聞風問)生産性向上 「余裕」が生み出す好循環 多賀谷克彦

やはり、頭を使い、ロボットも使い、好循環になる。

(波聞風問)生産性向上 「余裕」が生み出す好循環 多賀谷克彦
2018年1月23日05時00分

 生産性が低いと言われる日本のサービス業、とりわけ飲食業は深刻な人手不足にも直面する。その飲食業でも、AIやICTを使い生産性の向上に取り組むチェーンがあると聞き、店舗に出向いた。

 和食チェーンのがんこフードサービス(大阪市)は関西を中心に約90店をもつ。その一つ「高瀬川二条苑(えん)」は、豪商・角倉了以が約400年前、京都につくった屋敷を改装した。明治期には山縣有朋の別邸でもあったという。

 その日本家屋の廊下を配膳ロボット4台が動き回っていた。厨房(ちゅうぼう)で料理を乗せ、パネルに示された座敷名に触れると、床に敷かれた磁気テープを読みながら進み、無線を受信して方向転換する。和装の女性従業員が座敷に到着したロボットから料理をとりだし、お客様に出す流れだ。

 ロボットは昨年末に導入した。近く、従業員の手足にセンサーを取り付け、ロボット導入前と動きがどう変わったかを調べるという。

 働きながら工学博士号を取った副社長の新村(しんむら)猛さん(46)は、大学や研究機関とサービス業の効率化を探ってきた。「研究は途上だが、無駄な動きを減らしたい。例えば、多くの従業員がみる予約台帳は店の中心にあった方がいい。工場では人が動かずにモノを動かすが、サービス業はそうもいかない」と言う。

 新村さんの挑戦は10年ほど前から続く。最近、従業員の動きのデータをAIを搭載したシミュレーターを使い厨房のレイアウトを変えた。調理過程の一部を自動化した。成果として、ランチの準備に早朝出勤していた従業員の労働時間を短くできたという。

 この店の40歳代の調理長から言われた。「入社以来、最も楽してます。12月でもあまり残業しなかった」。この厨房の1時間1人当たり売上高は最大1・7倍に伸びた。

 時間に余裕があると、料理が美しく仕上がり、量目が均等になる。評判が上がり、予約客が増えれば、仕入れ、人員配置にも無駄がなくなる。そこに好循環が生まれる。

 また、二条苑ではロボット導入以降、社員の意識が変わった。マネジャーの岡田啓さん(40)は「ロボットの活用法など従業員からの提案が相次ぐようになった」と言う。新村さんも「現場を担うのは人。先端技術を導入しても、働く人が腹に落ちないと成果はでない」と明かす。

 生産性の向上と言えば、会議や残業を減らそうとなりがち。数字が改善しても、顧客、従業員の満足度が低いままでは続かない。がんこ創業者の小嶋淳司会長(82)も「余裕ができた時間を接客、従業員の対話に充てるべきだ」と指示しているという。

 仕事の満足度が低いから人が来ない。業績が伸びない。投資ができない。働く時間が長くなる。だから生産性が低くなる。この負の連鎖を断ち切る。逆説的だが、高い生産性を実現するのは、余裕のある仕事、職場ではないか。

 (たがやかつひこ 編集委員)

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