東海バネ工業株式会社【No25いい会社視察2016/9/12】

今回は2016年9月に坂本ゼミ夏季合宿先のひとつとして訪問させていただいた『東海バネ工業株式会社』さんをご紹介致します。ご訪問では、渡辺社長のお話のあとに数名のリーダー社員さんへの質問等を中心にお話をうかがい、その後工場を見学させていただきました。

東海バネ工業はフルオーダーメイドのばねを設計・製造・販売しています。ばね作りを職人技術と位置付け、全社員の技術の向上・働きやすい職場を追求していくことで、他社にはまねできない程、社風と技術を両立した会社と言えます。同社の製品は東京スカイツリーやロケット、発電所、ダム、高層ビル、人工衛星などであらゆる厳しい条件が求められる現場で使われており、今の日本にはなくてはならない存在です。


概要(2016年訪問時の情報をもとに作成)
創業 1944年
創業者 南谷三男氏
代表 代表取締役 渡辺良機
社員数 87名
平均年齢 38歳
売上 約20.9億円(2015年度実績)生産高は月30トン、受注は年間3万件
事業 金属ばね設計・製造・販売(オーダーメイド専用のばねメーカー)
売先業種 エネルギー47%、精密32%、環境8%、産業基盤7%、航空宇宙6%
納期遵守率 99.75%
材料在庫 約400トン。中には発注後納品まで1年もかかる材料もあるとのこと


1969年、南谷三男氏から後継ぎとして渡辺良機氏に入社の依頼がありました。先代には娘さんが3人いて、すでに3人すべての娘婿とも継ぐことを断っていたという事です。渡辺氏の兄が二女と結婚していたことから白羽の矢が立ちました。3年間口説かれ続け、渡辺氏は後継ぎを承諾。1973年に仕事を辞めて同社に入社しました。1984年、創業者である南谷氏の死去に伴い社長に就任しました。
先代は“ばね命”だったといい、入社当時は職人さんがいただけでした。
当初渡辺社長にはばねへの愛情は全くなかったといいます。そこで、“職人に本気で取り組んでもらうこと”、“職人が取り組んでくれる仕組みをつくること”を重視した経営が始まりました。

主な特徴
創業以来70年以上黒字を継続
適正価格販売(品質に自信をもち値引きをしない言い値販売)
 高い技術開発力を追求し続ける職人集団(高い技術のある職人が所属できる啓匠館)
多品種微量生産体制(平均ロット数5個)
 離職率がほぼゼロ・充実の福利厚生(結婚祝い金、子供手当等)
 人事評価は絶対評価

同社ではジョブローテーションを行っています。長い経験を持つ慣れた社員がやれば、会社としてリスクは少なく一般的には良いことだと考えますが、人は自分で気づかない長所がたくさんあるはずだと考えています。会社の方針としてジョブローテーションをすることで幅広い技術を探求できます。2015年は30名もの社員がジョブローテーションの対象となりました。途中で状況を見て見直すことも良くあるとのことです。結果として会社の力が向上します。

社長就任後31年間を振り返ったとき、職人の幸せ追求、働きがいを見つけること、ずっとそのことだけを考えて経営をしてきた、とお話されていました。
そして31年間でわかったこととして、3つ教えていただきました。
・人間、つかいものにならない人はいない
・給与を上げたら会社は良くなる
・無茶は駄目だが無理はしてほしい

渡辺社長は、同社に入社した時の給与はそれまでから大きく下がったと言います。特に給与の額まで話していなかったのです。それでも周りの環境に助けられたこともあり、“捨て身”の経営にまい進したと言います。まさに利他であると感じました。渡辺社長の人柄を感じながら経験に基づいた実感のこもったお話を聞けたことは何よりも勉強になりました。

***補足***
この投稿では2012/4~2018/3までの6年間法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室で経験した【いい会社視察】・【プロジェクト】・【授業で学んだこと】を中心に、毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(桝谷光洋)

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