株式会社エイチ・エス・エー【番外No27基調講演2018/9/15】

今週も先週火曜日に引き続いて番外編です。
2018年9月15日に慶応義塾大学日吉キャンパスで開催された“人を大切にする経営学会 第5回 全国大会”の基調講演から、株式会社エイチ・エス・エー田中勉代表取締役の印象的だったお話をご紹介させていただきます。

●概要
所在地 神奈川県小田原市
代表  代表取締役 田中勉
設立  1999年7月
資本金 1000万円
事業  通所介護、訪問介護、住宅型有料老人ホーム、児童デイサービス、居宅介護支援事業、福祉タクシー、住宅訪問マッサージ
売上  100,000万円
社員数 291名(パート含む)

●起業のきっかけにまつわる印象的なお話
田中社長はサラリーマン時代、“会社から与えられたノルマを達成することが仕事”だと疑問なく考えていたといいます。ある時、後輩と飲みニケーションの時、“これっていつまで続くんですかね?”と質問され、その時は“これが仕事”と田中社長は答えましたが、それ以降この出来事がずっと気になり、自分が生活をする社会とは?日本とは?というように思考を巡らすことになります。
・会社は社会の縮図と捉えるべきではないか
・人生における生きがい、仕事のやりがい、社会のために生きることについて
・仕事をすることに納得感を持つこと
社会のシステムと自己の関わり方を考え、生き方への関心が進むことで同社の起業に繋がったのだと感じました。

●国の成り立ちに合わせた会社の運営
日本は民主主義を選んでいる立憲主義国家であることから、国の運営と会社の運営を重ね合わせることを思考して同社を起業しています。
同社では、会社運営における個人情報以外のあらゆる情報を開示しています。
また労使の労働契約においては社員がどのポジションでどんな業務をおこないたいか、社員自身がエントリーすることができます。
具体的には、来期の事業計画を立てる際、各社員が自ら働き方を決め会社と交渉します。全社員の一次提出を取りまとめたうえで部門ごとの調整を図り最終事業計画を決定しています。
このエントリー制度のきっかけは、憲法にあるように“法の下の平等”であるのならば“人が人を評価すべきではない”と考えたことから、人事評価制度を廃止したことによって生まれています。

“本来、資本主義では企業経営の思想決定は経営者が行なうことが一般的ですが、民主主義の普及によって労働者自身も参加するようになり、労使協調主義によって相互に高め合うことを重視している”といいます。
同社では社員に対して介護事業を通して社会の役に立つことを意識してもらい、同時に社会分業の重要な一部を担っていることを理解してもらうように心がけています。
そして会社を“社会学校”と捉え、たとえ嫌いな人とでも仕事を通して共働できる力を身に着けます。一人一人の自覚を促し、社会人としての成長が社会の利益となり国の利益になると考えています。

同社の姿はどんな事業であれ究極的には人財育成業であるということに立ち戻らせてくれました。

***補足***
この投稿では2012/4~2018/3までの6年間法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室で経験した【いい会社視察】・【プロジェクト】・【授業で学んだこと】を中心に、毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(桝谷光洋)

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