人を大切にする経営学会第5回全国大会

人を大切にする経営学会が9月15日(土)と16日(日)の2日間にわたって、慶応義塾大学日吉キャンパスで開催されました。「経営学X幸福学」、「幸せのメカニズム」などの書籍で有名な慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究所の前野隆司教授に実行委員長を引き受けて頂き、「働き方改革と人を大切にする経営」をテーマに非常に活発な議論が交わされました。

最初の基調講演は未来工業(株)山田雅裕社長が登壇されました。「労働時間が短いから業績が上がる」というテーマで、会社がやるべきことを時間内におさめることへの強い拘りについて、事例をあげながら話されました。未来工業の社員の労働時間は短くしながらも、寡占化が進んだ国内電材市場で創業以来52年間2桁前後の利益を確保し続けている驚きの会社です。「常識を打ち破る新しい発想は、時間的、精神的ゆとりの中から生まれる」という山田社長の深い思いが未来工業の経営の本質であると感じました。会場のスクリーンには「常に考える」という文字が終始投影されており、「社員には、常に考えることしか要求したことはない」という山田社長の言葉が印象的でした。

次にさまざまな介護関連事業を手掛ける(株)エイチ・エス・エーの田中勉社長が登壇され、「働く人が主役の会社をめざして」というテーマで、話されました。田中社長の経営理念は実に個性的です。立憲主義にもとづき、憲法で守られた各人の基本的人権を社員と共有し、各人が主役として働ける環境をつくることを経営の基本としています。会社を社会の縮図としてとらえ、基本的に応募した人は誰でも採用し、さまざまな個性を持った社員で会社を運営されています。最近では人事評価制度も廃止し、自分がやりたい仕事に応募するエントリー制を導入したとのことです。 

初日最後の特別講演は大会実行委員長の前野隆司先生が登壇されました。前野先生は大企業に就職してロボットの研究もされていた方ですが、人を助ける機械よりも、そもそも人はどうしたら幸せになるかについて研究をしたいと思い、今の研究を始められました。そのアプローチは理系出身らしく、アンケートデータをコンピュータに分析させ、人が幸福になるための最も基本的な4つの因子を発見されました。さらにその分析をもとにした企業ワークショップを開催し、会社組織の中での人の幸福度を高める活動をされています。根底にある思いは坂本先生と同じであり、講演を聞いた多くの学会員は、前野先生の研究と活動にあらたな気づきと勇気を頂けたと思います。

この日の夜の懇親会には100名以上の方が参加し、多くの新しい出会いがありました。

2日目は3つの分科会に分かれ、それぞれ3組の発表者が直近の研究と取り組みについて報告し、活発な議論が展開されました。

最後に遠くタイから来日された、チュラロンコン大学 商・会計学部ボンタナラート・クリティニー講師をお招きし、「人を大切にする経営は世界にも通用できる:タイの事例から」というテーマで講演頂きました。今回はタイ2社の事例を紹介頂きましたが、クリティニー先生の強い思いによって、タイでの「人を大切にする」経営が益々広がっていくことが感じられ、多くの学会員も刺激を受けたことと思います。

坂本先生はじめ、高い志を持つ多くの中小企業経営者、研究者の皆さまの活動のおかげで、「人を大切にする経営」が確実に広がっていることを感じます。学会や各個人の活動を通じて、この流れがさらに加速されていることを実感できる全国大会でした。

最後に準備と運営にご協力頂いた慶應義塾大学関係者の皆さま、学会関係者の皆さまにお礼申し上げたいと思います。

(人材塾 榎戸康二)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です