「徳」の教育

バスの運転手さんと赤ちゃん

バス停からいつものバスに乗りました。バスは座る席はなく、私は前方の乗降口の反対側にたっていました。

次の停留所ではどっと多くの人が乗り、バスの中はあっという間に満員になってしまいました。立ち並ぶ人の熱気と暖房とで、バスの中は息苦しい状態になってしまいました。

バスが走り出した時、後方から赤ちゃんの鳴き声が聞こえました。

泣き叫ぶ赤ちゃんを乗せて、バスは新宿に向かいました。バスが次の停留所に着いた時、何人かが降りはじめました。

最後の人が降りる時、後方から「待ってください...、私降ります」と、若い女の人の声が聞こえました。

その人は立っている人をかき分けるように、前の方に進んできます。泣き叫ぶ赤ちゃんの声がどんどん近くなってくるので、あのお母さんであることは直ぐわかりました。

泣いている赤ちゃんを抱いたお母さんは運転手さんの横まで行き、お金を払おうとしました。すると運転手さんは「目的地はどこですか...」と聞いています。

そのお母さんは、小さな声で「新宿までですが、子供が泣くので、ここで降ります...」と答えました。

すると運転手さんは「ここから新宿まで歩いていくのは大変です。目的地まで乗っていってください...」と、そのお母さんに話しました。

そして、突然マイクのスイッチを入れたかと思うと「皆さん、この若いお母さんは新宿まで行くのですが、赤ちゃんが泣いて皆さんにご迷惑がかかるので、ここで降りるといっています。子供は小さい時は泣きます。赤ちゃんは泣くのが仕事です。どうぞ皆さん、少しの時間、赤ちゃんと、こちらのお母さんを一緒に乗せて行ってください」と話したのです。

何秒かが過ぎた時、一人の男性の拍手につられて、バスの乗客全員の大きな拍手がバスの中に沸き上がりました。

経営学者 元法政大学大学院教授 、人を大切にする経営学会会長、人財塾長。
17日月曜日に静岡市で開催された、「静岡県中小企業問題経営研究会」の忘年会での坂本会長のいくつかの心あたたまる資料の一話だ。

大学院のゼミや人財塾でも毎回、「徳」を培う資料をくつか配布する。
教育改革が必要。ほとんどが「才」の教育をしているので時には人殺しをしてしまう。
「才」より、「徳」の教育をしていく必要がある。

私は5年前に坂本ゼミに参加して「徳」の資料で半年間は涙ぐんだ。

今日は65歳の私の20歳年下だが、坂本ゼミの同級生の服部義典さんの命日だ。2年前に亡くなった。
内部障がいで、心臓はじめ臓器が左右反対だ。呼吸は普通の人の40%ほどしかなかった。
30歳までで亡くなると思っていたと言っていた。

彼は就職時に成績は良かったが障がい者ということで入社を断られ続けた。やっと障がい者の子供がいる社長の会社に就職して、就職が難しい障がい者のために会社を興した。
10名ほでの正社員の会社といくつかの会社を興した。

彼の通夜、告別式には障がい者の方が大勢参列した。
服部さん、障がい者のお父さん、お兄さんのようだった。
今日はお父さんとお母さんに挨拶に行く。
彼のことは中日新聞・東京新聞の社説に2回紹介された。彼の貢献は大きい。

彼の前では「できない」とは言えない。

「人を大切にする経営学会」
中部支部
知野 進一郎

第6回の「人を大切にする経営学会」関西支部の坂本会長の講演内容は次週にします。

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