経営者・上司に求められる冷静な判断能力

今年も、1月2日、3日と、第95回東京箱根間往復大学駅伝
(箱根駅伝)が開催された。

毎回、激しい優勝争い・シード権争いが繰り広げられるなかで、
我々が考えるべき問題も提起してくれるのが、この大会だ。

今回は、往路1区でそれが起きた。
スタート直後に、大東文化大学の4年生の新井康平選手が転倒し、
足を引きずりながら、襷をつないだシーンだ。
沿道やTVで、このシーンを見た方も多かっただろう。
ただ、新井選手の頑張りを否定するつもりはないが、正直、
このシーンで経営者・上司が下す判断の難しさを感じざるを得なかった。

スタート直後の転倒ということもあり、
見た目にもそのダメージは明らかだった。
同学の奈良修監督は、「難しければ棄権してもかまわない」
と伝えたといわれているが、実際、選手を止めることはなく、
レース後、棄権せずに走り終えたことに
「棄権しなかったのが良かったのか分からない」
と答えている。

どちらの立場となっても、瞬時に判断を下すのは難しい場面ではあった。
選手の立場からすれば、スタート直後の転倒ということもあり、
何とかカバーしなければと痛みを忘れて走るのは当然だろう。
また1区で棄権となれば、残りの9区間の選手やサポートに回った
部員のことを考えれば、たとえ走れなくても自ら走れない
とはいえなかっただろう。

また監督の立場からすれば、残りの9区間の選手やサポートに回った
部員のことを考え、何とか記録は残したいという思いになること。
また様々な関係者からの過度な期待というプレッシャーを考えれば
簡単に止める決断ができないのもわからなくもない。

ただ、指導者として、競技に熱くなるなかにも、冷静な判断能力を
常に持つことが求められる場面ではあった。

この件に関して、マラソン日本記録保持者の大迫傑氏が、
当日のTV中継を含め、
選手に対しては、
「捻挫は注意しないと別な故障で繰り返したりで時間が掛かるから
しっかり治して欲しい」と気にかけ、
そのうえで実況解説について
「選手の転倒は、心配する場面ではあるけど、感動する場面ではない」
「感動的実況を良しとしてしまうと、回り回って
選手の判断を鈍らせてしまう」

さらに続けて、自分に置き換えると
「どんな酷い怪我であっても単純にやめにくい」
「選手はどうやったって走りたいはず、
だけどそれを冷静に判断できない環境が今」
「感動=選手の健康と成長でない」
と言及している。

今回の件を、スポーツの中の一場面としてしまうのは危険だと思う。
働き方改革が強く叫ばれているにもかかわらず、
まだまだ、会社のなかでは
「自身が無理をしてでも会社に貢献したい」
「仕事を進めるために土日・祝日でも出社をします」
と考えている社員も少なくない。

確かに、こういった意欲は認めるべきではあるが、
経営者・上司として、社員が冷静に判断できない状況を
つくってはいけないし、
また仮にその状況になっているとしたら、
それを止められるのは、あなたたちしかいないことを認識してほしい。

人を大切にする経営学会事務局支援スタッフ 坂本洋介

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