残業問題解決とビジネスモデル転換やICT活用

建設業界では、「残業100時間は当たり前」といった声が聞かれる。
一方、象徴的な例として、東京オリンピックの施設建設の納期遅れなどが、時々報道されている。

こうした状況の中で、週休2日制がとれず、残業時間が長い建設業は、数ある業種の中でも、2019年4月(中小企業では2020年4月)より、時間外労働の上限規制が始まる。
原則の時間外労働の上限時間は現行の制度と変わらないが、月45時間かつ年360時間(1年単位の変形労働時間制を適用する場合は、月42時間かつ年320時間)だが、臨時的な特別な事情があって労使が合意する場合、いわゆる「特別条項付き36協定」を締結する場合でも、「年720時間」という上限規制が設けられることとなった。さらに年720時間以内であっても、一時的な繁忙期などにより単月で大幅な時間外労働が発生するリスクを見越して、追加で3つの上限規制が設けられた。

人手不足なのに加えて、2020年のオリンピックに向けた建設ラッシュも加速し、現場で働く人の仕事量はさらに増えている。

建設業は残業時間の上限規制が儲けられ、規制も2024年と当面除外になったために、医者や自動車運行業者とともに、どうしても働く人の残業も多くなる。
(一方、建設業界で働く人も労働基準法は当然適応、会社側が基準を超えて残業させることは「違法」になる)

私が経営するコンサルタント会社でも、残業問題の解決のための調査・検討を行ってきた。残業の要因を5種類に分類して、短期・中長期の対応策をそれなりに体系化させている。

建設会社において、公共事業中心と民間受注中心或いは、オンリーのところでは、その違いは明白である。当然、公共中心の会社の方が残業時間が多い。
理由は、公共工事では、工期遅れになれば、役所からの遅延金(罰金)と指名停止処分といったペナルティーがあるからだ。遅延金につきましては、建設業法に則った利率にて工事金より差し引かれ、それを弊社は下請業者の工事金より差し引かれる。このことは、下請け会社にも当然影響がある。そのため、何が何でも、納期を守るためには、できればしたくない残業をせざるを得ないのである。

現在、第9回の二次審査が行われているが、日本でいちばん大切にしたい会社大賞は、残業にも厳しい基準を設けている。建設会社で受賞したのは三和建設株式会社だけであるが、同社は、以前は、公共工事も行っていたが、現在は、民間100%に転換し、さらに、食品工業や倉庫などを中心にして、絞り込んだ中で、NO1ブランドを確立するといった戦略である。

何が言いたいかといえば、それは、残業削減を行いたいならば、ビジネスモデル転換が必要であるということである。建設会社であれば、公共事業中心であれば、冒頭に書いた東京オリンピックの納期といった象徴的なケースだけでなく、地方の公共事業においても基本的な構造は同じである。

審査に回っていると、建設関連会社からは、

「納期は守れ、残業は減らせは難しい」

といった声が聞かれるた、上記のような背景から、そう言いたくなることも理解できる。
そして、「簡単にビジネスモデルの転換と言われても難しい」
とも言われるが、こちらもその通りである。実際、三和建設株式会社は、計画的に時間をかけて事業転換してきている。

さらに、最近のICT技術の発達は目まぐるしい。
今回の第二次審査では、建設会社同様に、残業が多いと言われる介護関係の組織では、ICTを活用することにより、残業が同業種に比べて極端に少なく運営できている。さらに、建設業界もICT技術により、今後、大幅に改善が進む可能性がある。

難しいから・・・で終わっては、その先に進めることができない!人を大切にする経営は、思いはあっても、その実践は様々な制約で簡単ではない。

そして、日本でいちばん大切にしたい会社大賞は、今年も、約100社の応募、一次審査を通過したのは、約三分の1とハードルは高い。

しかし、日本でいちばん大切にしたい会社大賞の受賞を目指すことにより、自社の課題が明確になる。また、受賞企業は、前述の事例でも挙げたように難しい課題を解決したノウハウが集まっているので、解決策の糸口がつかめるといったメリットもある。

社員をはじめとする関係者の人の命と生活を守ることが経営者の使命である。是非、中長期の観点からも経営改革を進めて、持続性のある人を大切にする経営を実現して欲しいし、自社もそうありたい。

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