厳しい審査の自負と受賞企業の自戒が印象的だった~第9回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞授賞式から

 3月22日(金曜日)は法政大学市ケ谷キャンパスで第9回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞表彰式が開かれた。その模様の概要と気づきなどを速報したい。私は事務局ではなく、ジャーナリスティックな個人の立場でお伝えする。
 まずは概要。冒頭の挨拶は実行委員長の清成忠男元法政大学総長。主催校代表挨拶は政策創造研究科長の上山肇教授。「大賞は坂本光司審査委員長の2008年の著書が発端。坂本会長は法政大学を退官されたが、本学としては今後とも支援したい」と表明していた。
 その後、「講評」、経産省、厚労省、中小企業庁、中小機構の挨拶、大賞授与、記念撮影、受賞企業4社のスピーチ。そしてオリジナル会葬礼状トップの株式会社マコセエージェンシー(鹿児島市)の五十嵐芳明代表取締役の特別講演へと続いた。懇親会では特別賞受賞企業16社のスピーチも行われた。さらに第1回「人を大切にする経営大学院事業(経営人財塾)」の修了証書授与式(学会認定の人本経営学修士=EMBAの授与式)も行われている。
 式典では受賞者、参加者とも「人を大切にする経営」に取り組むことについて勇気づけられ、多くの学びと仲間を得たと思われる。もちろん社員の励みにもなっただろう。私も前回に続き各社の心構えと取り組みに圧倒されていた。まずは感謝を申し上げたい。
 その中で今回、私が見逃してはいけないと感じたことは、坂本審査委員長が「講評」の中で審査方法を実に丁寧に説明していたこと。
 企業顕彰制度はもともと乱発気味。さらに人手不足の中、経営の目的が「(社員など)関係者の幸福」ではなく、「企業の利益」のままなのに、「人を大切にする」経営をうたう企業も多くなっている。
 誰が表彰したか、誰が受賞したかだけではなく、どう審査したかなど顕彰制度の品質が問われるようになっているのだ。そうした中、あえて時間をとって説明したと推察される。
 大賞の目的は、業績や効率、勝ち負けではなく、人を大切にする経営を行う企業を顕彰してそうした企業を増やすこと。今回は過去最多の100社の他薦・自薦の応募があり、(「人を大切にする経営」は難しいとされてきた)規模の大きな会社の応募も増えた。
 審査は1次(書類審査)、2次(ヒアリングなど現地調査)3次(最終審査)からなる。これを23名の審査委員が行った。1次審査基準をパスした企業は50社。社風や理念の浸透ぶり、就業環境や福利厚生施設の整備状況などを確認する2次審査をパスした企業は38社。最終的に20社を表彰した。
 応募基準、審査基準についてお伝えする余白がここにはないが、応募基準をクリアするだけでも容易ではない。私がかつて商工会議所の企業顕彰制度の企画担当者に取材したところ「こんな基準では制度として成立しない」と話していた。会員企業が受賞できない顕彰制度などありえないのだ。
 第3次審査のチェック項目も明らかにした。例えば、主要項目の一つでも著しく劣っていることなど。「残業時間30時間以上」は「人殺しをしているようなもの」、「(転職的)離職率5%以上」は「その会社では幸せになれないと社員が言っているようなもの」と話していた。
 もともと「いい会社」は謙虚だが、懇親会における受賞スピーチを含め自戒の言葉が多かったのが印象的だった。
 さて表彰企業。ブログは2000文字の制約があるので、今回は20社のうち主要4賞に絞り、坂本審査委員長コメントと受賞企業スピーチをとりあげる。
 まず坂本審査委員長のコメント
○生活協同組合コープみやざき(宮崎市)
「経済産業大臣賞は大きな企業が対象。生協の受賞は初。大きくなっても中小企業の良さを忘れない経営。定年なしの無期雇用(70歳以上が29名在籍)」
○株式会社共同(浜松市)
「厚生労働大臣賞は人事労務がすばらしい企業。離職率は0.5%。浜松の大企業の定年退職者の受け皿として機能しており、最高齢は85歳」
○大和合金株式会社・三芳合金工業(埼玉県三芳町)
「中小企業長官賞 特殊銅合金(という先端材料)をやっているが、3Kといわれた鋳造。社員満足度を高めるのはたいへん。愚直一途の経営。140名の社員中 親子社員10組、夫婦社員5組、兄弟社員7組。ひとが集まる会社がいい会社ではない。世襲社員はいい会社の証明。離職率ゼロ」
○株式会社武蔵境自動車教習所(東京都武蔵野市)  「中小企業基盤整備機構理事長賞 自動車教習所のモデル中のモデル。社員教育に1人30万円以上かける。中小企業の平均は1~2万円である」
 最後に受賞企業代表者のスピーチから印象的な言葉を拾った。
○真方和男コープみやざき代表理事・理事長 「善の循環」 職員2000名、組合員(出資者)25万名からの声が年間8万件寄せられ、組合員の誕生日を祝う取り組みなどまで行っている。
○有賀公哉共同代表取締役社長 「CSより先ずES」 重要な問題を社長に直接相談できる「ブレイブライン」(連絡番号等を明記したカード)を社員に配布
○荻野源次郎大和合金代表取締役社長 「チャレンジ精神とチームワークは天下一品」 18歳から84歳までの社員がいる。おじいちゃんやおばあちゃん、孫と一緒の「社員旅行」を行っている。
○高橋勇武蔵境自動車教習所代表取締役会長 「共存共栄ではなく共尊共栄」 年間20件以上の地域イベントを行う 10年後、自動車教習所はなくなる。社員と家族を守るため受け皿事業をつくっている。
 受賞企業は第9回で合計110社になったが日本の企業数(370万社)からいえばごくごく一部。大賞は絶対評価での審査。表彰企業数に限りはない。次回は第10回、大賞企業候補がさらに多数出てくることを期待したい。神原哲也(人を大切にする経営学会会員、中小企業診断士・認定経営革新等支援機関、日本記者クラブ会員) 
 

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