当たり目のことを当たり前にできなくなった社会

企業の不祥事に関する報道が後を絶たない。
特に多く報道されているように思うのが、
われわれの食住に関わる企業の不祥事問題・不適切動画問題だ。

食で言えば、大手コンビニチェーン店の店員が、
商品をレジ袋に入れる際に、
パッケージやペットボトルの飲み口をなめる様子を
撮影した映像をネット上に投稿した問題。

また大手牛丼チェーン店でも、やはり店員が
床に氷のようなものを投げたり、
調理器具を本来の使用目的とは明らかに異なる方法で
使用した映像をネット上に投稿していた。

このほかにも、数多くの問題が連日あがっている。

いずれも、非正規社員が起こした問題で、
「バイトテロ」などと呼ばれてはいるが、
非正規だから許されるというわけには当然ならず、
その企業・ブランドイメージの低下は計り知れない。

また住で言えば、賃貸不動産大手企業が、
賃貸アパートの施工不良問題を起こしている。

報道によれば、その企業が建設した建物は、
耐火構造や遮音性で国の基準を満たしていない
などの不備が見つかった。
この問題を放置すると、万が一、火災が起きた場合、
通常よりも燃えやすくなり、建物の内部や外部からの
火災の延焼を速めるという問題が起こるという。

企業は、天井が建築基準法の耐火性能を満たしていない
物件の約7,800人の入居者に対して、3月末までの転居を
要請しているというが、引っ越しの繁忙期と重なるうえ、
急な引っ越しに対応できるはずもなく、
その対応は極めて不十分といわざるを得ない。

さらに、この問題は入居者だけではなく
オーナーにも大きな影響を及ぼしている。
それにもかかわらず、企業が開いた説明会には、
問題を引き起こしたトップである社長は出席しなった。

当然、対応に忙しいことは容易に想像できるが、
これまでのオーナーとの関係を考えれば、
まずこの場に出てきて、謝罪をする。
現時点で分かっていることを全て説明をすることが
最優先の業務であったはずだ。
この場に出てこないで、
「一日も早く、信頼回復を実現できるように尽力してまいります。」
と言っても、その言葉を信じられる人はどれだけいるだろうか。

いずれにしても、企業の不祥事はどんな小さなことでも
あってはならないが、特に今回のような、
われわれの衣食住に関する不祥事は絶対にあってはならないことだ。

不祥事を起こしていない企業のほうが圧倒的に多い。
しかし、こういった不祥事が起こる度に、
真面目に経営している企業が疑いの目で見られるのは
残念で仕方がない。
多くの企業は当たり前のことを当たり目にやっている。
ただ、一部の企業では、業績が企業目的になってしまい、
その達成のために、企業が大切にすべき、人たちを犠牲にした
経営が行われ、不祥事を起こしていく。

本学会会長の坂本光司氏は、
「正しいか・正しくないか」
「自然か・不自然か」
を経営判断の軸にすれば、大きな間違いや不祥事など
起こるはずがないと言っている。
また、これまで私がお会いしてきた経営者も
「自分が逆の立場だったら、どうすればすべきか考えている」
「自分が嫌なことは絶対にしないし、させない」
と話す方ばかりだ。

これらのことは言われるまでもなく、当たり前のことと
誰もが分かっているのに、実際にできていない。
なぜ、できなくなったのかを冷静に考えないと、
われわれは今後も大きな取り返しのつかない間違いを
起こし続けることになるだろう。

人を大切にする経営学会 事務局支援スタッフ 坂本 洋介

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