協力会社へのコストダウン要求で、逆にコストが高くなる?
建設業界は、スーパーゼネコンを頂点とする下請け構造です。重層構造は、バブル崩壊やリーマンショック等景気が悪化し、事業量が減少することで加速した。建設工事は一品発注であるため、継続的取引ではありません。
そのため、元受けは、正社員は最低限に抑えて、事業の不安定さを外注でカバーするために、重層下請け構造が広がっていきました。民間工事では「テン・テン・パー(手付金10%、中間金10%、竣工後80%)と言われる支払い条件です。さらには、大手物件の中には、竣工後、半年先といった支払い条件もある中、技術があっても資金力がなければ元請けになれない構造もあるのが事実です。しかし、こうした構造のため、不条理と思われるようなことが当たり前に発生しています。
某、建設業界の経営者に聞いた実話ですが、自身の信念と向き合ったとき、どうしても許せなかったといいます。
徹夜で作成した30枚の設計書を見ないで受注金額要求
以前から、取引のある地元有名企業が、大きな建設物を立てることになりました。物件の大きさから、某スーパーゼネコンが元請けになり、その下請として同社に依頼がありました。
同社の工事だけでも2億円はかかる案件でしたが、その経営者は、元請けの利益も考えて1億6千万で、社員に徹夜までして30枚に及ぶ設計図を提出しました。ところが、元請けの担当者は、30枚の設計書を開くこともなく、半分の価格を要求したそうです。同社では、このことが契機になり、基本的には、下請工事を受けず、直接取引に舵を切ったとのことです。
別の中堅ゼネコンで、私が経営する会社のお客様ですが、坂本会長から提唱している協力会社満足度調査を実施
いただきましたが、興味深い結果が出ました。
コストダウンの要求を受けると見込んだ協力会社は、その要求分を上乗せした見積を出す傾向にあります。その過程では、何度も綱引きがあり、折り合いをつけます。実は、そのやりとりにかかった日数、人件費その他見えないコストが発生しており、信用取引でやっているところに比べて、結果的にコストアップされていたということが判明したのです。
その他、様々な点で、協力会社満足度調査から発見がありました。
コストダウンできたつもりが、かえってコストアップ。
さらに、コストダウンを要求される協力会社からしても、ゼネコンにいい印象は持たないでしょう。そして、長期的、トータルで考えたら、前述な過度なコストダウン要求は、マイナスでしかないのではないでしょうか。
もう一つ、うれしかったことは、
「協力会社満足度調査」をするゼネコンの経営姿勢に対する高い評価が、自由記入から得られたことです。
坂本会長は、
「協力会社満足度調査が、顧客満足度調査と同様に当たり前におこなわれるようになれば、力関係からの不条理なコストダウン要求が減る」
と、以前から言われますが、その通りです。
日本でいちばん大切にしたい会社大賞を受賞するような会社が、行っている取組みは、長期的な繁栄につながることがわかり、うれしく思いました。
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