オーナー経営者の悩み解消!?欧米発の経営理論とは~ファミリービジネス経営論(上)

・同族経営やオーナー経営がメディアで前向きに取り上げられることが多くなっている(写真)。研究者やコンサルタントの間では欧米発の経営理論を念頭に同族経営やオーナー経営の企業は、ファミリービジネス(FB)と言うことが多い。
・最近、全米経営者協会が株主だけでなくすべての関係者を大切にするというステートメントを発表したが、欧米でも永続を目指すFBは日本の老舗のように関係者すべてを大切にする経営を昔から追求してきた。事業永続のためには、それしかないのである。                                 
・さらに関係者すべてを大切にする経営の前提となるFBの経営のための経営理論が日本にはないのに(利益のために関係者を犠牲にする経営を日本に押し付けたかのようなMBA経営の)欧米にあるのだ、今回はそういう話をお伝えしたい。
・東京都中小企業診断士協会ファミリービジネス研究会の定例会(8月23日)でFB分野の日本におけるパイオニアである大澤真さんに話をうかがった(写真)。大澤さんはFBの事業永続支援コンサルタントの株式会社フィーモ(港区)の代表である。
・私は2017年3月、法政ビジネススクール在学中に大澤さんの話を聞いて、その直後にFB学会に入会した。坂本光司教授(当時)の話を聞いて研究室の研究生になると決めたのと同時期である。久々の大澤さんの話を踏まえてFBの状況とその理論、実際をお伝えする。
・大澤さんは日本銀行沖縄支店長在職中に欧米にはFBの経営理論があることを知り、2006年にプライスウォーターハウスクーパース(PwC)に入社、6年間の在職中に欧米の動向を調査した。2008年にはファミリービジネス学会とファミリービジネス研究所を立ち上げている。

日本の上場企業の半数超はファミリービジネス
・FBの統一的な定義はないが、典型的なFBは、創業者などの一族が株主であり、経営もやっている企業(オーナー経営と言われる)。人を大切にする経営学会の会員企業のほとんどはFBである。広義では、一族が経営に関与している、あるいは主要な株主となっている企業はFBである。
・世界最大の企業であるウォルマート(米国)は創業者一族のウォルトンファミリーが過半数の株式を握っており、FBである。同社は230万人の従業員を擁す。また日本では例えば資本提携を最近、発表したトヨタとスズキはFBである。
・反対にファミリービジネスでないビジネス(NFB、一般企業)の典型的な形は、株主が不特定多数、経営者は専門経営者(ビジネススクール出身のプロ経営者や社員出身のいわゆるサラリーマン経営者)。
・私の日経での初任地(1982年)は大阪。安藤百福氏(日清食品)や石橋信夫氏(大和ハウス工業)、中内功氏(旧ダイエー)ら上場を遂げた革新的なFB創業経営者を多数取材した。振り返れば取材先の多くはFBだった。
・研究によれば、今でも上場企業の過半数はFBとのこと。竹中工務店やサントリーなど上場(公開)していない会社はもちろんFBだ。FBが企業の大半という状況は欧米でも同じだった。
・欧米のビジネススクールにはファミリービジネス学科が80超、日本はゼロ
・欧米のビジネススクールではまさに私が駆け出しの頃から、FBの理論的研究が始まっていた。FBとNFBでは大きな差異があることに気付いたからだ。
・FBの本質はFBを一族で継続する意思があり、世代を超えた永続経営を志向することにある。永続志向があるすぐれたFBは必然的に利他的になり、人を大切にする経営になる。
・大澤さんによると現在、欧米のビジネススクールには80超のファミリービジネスの学科があるそうだ。日本では明治大学ビジネススクールにファミリービジネスのコースがあるぐらいで、学科はまだない、とのことである。
・そうした中、欧米ビジネススクールのFB論の翻訳本も時々出版されるようになっている。直近では「ビジネススクールで教えているファミリービジネス経営論leading Family Business」(ジャスティン・B・グレイグ&ケンムーア著)がプレジデント社から発行されている。
・なぜ、圧倒的多数のFBの研究が日本では遅れたのだろうか。奥村昭博静岡県立大学副学長・慶応義塾大学名誉教授は、「FBはかつて日の当たらない研究分野。FBが遅れた存在でいずれ淘汰され消滅するだろうと思われたからである」(一橋ビジネスレビュー2015年AUT)と振り返っている。
・同族等の言葉のイメージもよいとはいえなかった。老舗の不祥事は繰り返し報道され、同族間、あるいは創業者一族とプロ経営者の間の対立をめぐる報道も多い。もともと公私混同が疑われるなど厳しい視線にさらされがちでもある。
オーナー経営者の多くの悩みはファミリービジネスの理論で解決できる
・海外ではFBにポジティブ。スイスのビジネススクールのIMDが世界ファミリービジネス大賞を1996年度に創設、1989年創立のファミリービジネスネットワークインターナショナルも盛況のようだ。
・そうした中で日本でも同族経営を見直す動きが強まっている。FBはダメ企業どころかパーフォーマンスもNFBより高いことがわかっている。そのうえ日本は長寿企業大国でもある。研究の価値も研究の対象もある。
・星野リゾート代表の星野佳路さんは著書等で自身の事業承継は泥沼の親子喧嘩をともなうハードランディングだったこと、欧米にあるFB経営理論を知っていたらそんな不幸なことにならなかったこと、などを語っている。星野さんは米国コーネル大学ホテル経営大学院のMBAである。
・そして、上記の書籍「経営論」の解説で、その著者の特別授業に参加した時「FB経営者の悩みの多くはすでに体系化された理論やモデルを使うことによって効率的に解決できると実感した」と語っている。そのFBの理論と実際については、次回9月15日(日曜日)に続けたい。
神原哲也(日本記者クラブ会員、中小企業診断士、認定経営革新等支援機関、人を大切にする経営学会会員)

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