オーナー経営者の悩み解消!?欧米発の経営理論とは~ファミリービジネス経営論(下)

 ファミリービジネス経営論(上)(9月1日付)の続きを書く。
 1回目では、欧米ではファミリービジネスの経営理論やモデルの研究が進んでいることをお伝えした。2回目は日本のFBコンサルタントのパイオニアである大澤真さん(株式会社フィーモ代表)の話を基礎にその理論と実際をお伝えしたい。
 まずは理論。もっとも有名なフレームワーク(モデル)はスリーサークルだろう。1978年にジョン・デービス氏(当時、ハーバードビジネススクール)らが提唱した(写真は1982年の論文で示したもの)。
https://johndavis.com/three-circle-model-family-business-system/
 「ファミリービジネス経営論」(ジャスティン・B・クレイグら著、邦訳版2019年6月プレジデント社発行)はスリーサークルについて以下のように説明している。
 ファミリービジネスのサブシステム(下部構造)にはファミリー(家族・一族)、ビジネス(マネジャー・経営執行者)、オーナーシップ(株式等所有者)のスリーサークルがある。3つのサークルは、それぞれ別個に運営され、境界線がある。だが重なり合い、作用し合い、依存し合っている。
 スリーサークルはFBのリーダーが自分の立場や役割を理解したり、家族・一族メンバーの立場や考え方を理解したりするうえで役立ち、直面する問題を説明するうえで役立つ、という。スリーサークルの真ん中にいるオーナー経営者は3つのサークルでできる7つ立場を理解して、そのうえで個々人を尊重した意思決定を行う力が求められる。このためビジネスとファミリーの価値のジレンマ(板挟み)など一般企業にはない問題に悩まされる 
家族にもビジョンや戦略、ガバナンスの会議とルールを!
 上記のような難しい問題に直面するファミリービジネスの課題(ビジネスもファミリーも永続することなど)の解決の方策はいくつかある。その一つがファミリーメンバーの間でビジョンやルールについて事前に話し合ってコンセンサスを形成しておくことだ。
 大澤さんがコンサルティングで活用しているのはパラレル・プランニング(写真)。これは事業(ビジネス)と並行して、家族についてもビジョンや戦略、資本政策、ガバナンスを策定、実行する。オーナーシップにかかわる資本政策は、事業と家族の両軸で策定する形になっている。
 現状は事業についての理念、ビジョン、戦略、資本政策、ガバナンスがそろっているFBは少数だろうが、家族については家訓があったとしても家族のガバナンスまで策定しているFBはさらに希少だろう。
 だがスリーサークルで明らかなように複雑な関係の中で意思決定を行っていくFBにとって、メンバーが事前に話し合って合意した家族のビジョンやガバナンスのルールがあれば課題解決に役立つ。
 大澤さんが公表した事例は、広島のお好み焼きのオタフクソースの創業家が策定した「佐々木家 家族憲章」(2015年)である。
 同社グループは創業97年、年商250億円でソース生産日本一。佐々木家が所有と経営を継承してきた。現在は第3世代7代目社長。8家が所有と経営にかかわり、持ち株比率は8家同一、また創業家の意思決定の最高機関である「家族会議」は8家代表各1人の構成になっている。
 オタフクソースは「家族憲章」を2年かけ完成、8家の「家族会議」で重要事項を決定、家族憲章は2年かけて完成させた。このプロセスでファミリーメンバーのFBに対する理解やメンバー同士のコミュニケーションが促進され、求心力も強まったことだろう。
 憲章に基づいて、1家で当主がなくなったのを受けて若い第4世代が家族会議の地位を継承するなど、すでに憲章は実行されている。佐々木家では、家族憲章を実行するために「ファミリーオフィス」を設立、ファミリーオフィスがオフィス事業や家族の最重要事項の決定、ファミリー全体のお祭りのファミリー会、後継者教育、資産運用などをサポートしている、という。
 企業の永続により従業員など関係者の幸せを願う経営者や支援者には、FBの理論やフレームワークを参考にしてもらいたいと思う。ファミリーオフィスは一定以上の資産規模がないと運営が難しいが、家族会議や家族憲章制定の取り組みは規模を問わずに取り組めることである。
神原哲也(日本記者クラブ会員、中小企業診断士、認定経営革新等支援機関、人を大切にする経営学会会員)

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