初めての外国人採用

 40年程前、高度成長で日本中が人材難でした。仕事はあるが人不足で企業は窮地に追いこまれました。その頃外国人採用の窓口を多く紹介されました。同時に日本人の中途採用のいかがわしい業者からの誘いもありました。そうした状況下で我社もご多分に漏れず、採用にはお金、時間、そして知恵と工夫を駆使しました。その時に考えました。
 私達の目的とすることは何か、ミッションは何か、その頃、SAVE THE EARTHのサービスマーク“私達の手に汗して地球を守る”そんなロマンを社員の皆と考えて形にしています。
前出のように多くの外国人が仕事を求めてやって来ている現実に、喉から手が出る程採用を迷いました。けれどハタと考えたこと。私達はこの日本という国で、この地で人生を全うする人がそのミッションの素に作業を学び、工夫を重ね、解決の道を共有する人を求めているのです。その当時は高卒、大卒の新卒に向けて会社の現実を見せ、決して楽な仕事ではないことを知ってもらい、場合によってはご両親にご挨拶にも行き、承諾を得るということを展開していた頃です。今のお金のみを求めて日本に来ている人、それは私達の課題を理解してくれるだろうか。もし、他にもっとお金を出してくれるところがあれば私たちの思いに関わらず、別れの時を迎えてしまうのではないかと心寂しい気持ちになりました。
そこでやはり我社は日本人の志しを少しでも共有できる新卒の学生を基軸にして採用しようと決め、外国人採用は一切お断りすることにしました。
 創業50年、振り返って気付いてみたら次期役員候補、幹部社員は新卒社員が揃っています。不備の多い会社でよくぞここまで一緒に頑張ってきてくれたものと感謝と喜びが湧いてきます。それは彼等に確認しているわけではありませんが事業分野へのミッションが大きくあるのではと思っています。
グローバル化で現実に地球規模で問題を共有し、安全・安心のスタンダード作りが急務です。それには外国人採用を以前と違った視点、それは人手は勿論ですが、問題共有に関しての身体の汗と脳の汗、ハートの汗をかく、互いの叡智をぶつけ合って問題解決の仲間としての人財の確保です。そうしたことを考えている時、バングラディシュの青年との縁がありました。彼は富山大学の博士課程を卒業し、夢は3歳になるお嬢さんが成人するまでにバングラディシュの川を綺麗にしたい。そのミッションに一目惚れしました。勿論才能のみではなく人柄、人間力にも共感するものがあり、外国人という違和感がありませんでした。私達の前途に途が見える思いがしました。
 志しを一つにする外国人と初めての出会いです。同じ地球人として問題を共有して今後展開出来ると思えば、社会貢献の夢が広がり、現実のものとなっていきます。
そこで副社長、工場長、分析責任者に面接してもらった結果、全員とも私と同じ見解で即採用の段取りということになりました。
ところが工場長が工場へ戻り、チームリーダーを集めバングラディシュの青年の話をすると、概ね理解されましたが、外国人の採用と聞いて1人猛反対者が出たのです。工場長から収拾がつかないので社長に来てほしいとのことで、翌日直ぐに行ったところ工場長、チームリーダー全員が神妙な面持ちで座っていました。一種の固い空気が流れていて、私もその空気に圧される感じがしましたが、気を取り直し今の私の思いを話しました。
私達の仕事は国内だけでは済まされないこと、仕事は今後様々な立場の人に理解されながら進めるべきこと、考え方を共有できることの大切さ等、30分位のつもりが気が付いたら1時間位話していたようです。
あまり明るい空気ではなかったのですが、社長がそこまで言うならと、承認されることになりました。そして晴れて11月1日入社です。後は工場長に委ねるしかありません。
12月の忘年会終了後に報告がありました。現場スタッフの皆さんとも溶け込んで、入社を心配していたリーダーにもすっかり受け入れられて、とても楽しい忘年会になったようです。その後、彼の上司からの報告もそれはそれは評価の高いものでした。
 こうして初めての外国人採用は一年経過後、社員の視野を広げ、壁を取り除き、ミッションを共にする仲間・家族の一員となりました。
思いを共有するのは外国人だけではありません。ダイバーシティそのものです。
子育て中のママさん社員さん、協力会社さん、インターンシップの学生さん、会社訪問に来る高校生、近隣の方、内定者の皆さん、何回か挑戦してもうまくいかなかった障害者さんも今後は積極的に取り組みたいと思います。
 人を大切にする経営学会に学び、志しを一つに海外との取組にも浸透させたら今のSDGsも高いレベルで誰もがハッピーの世界が進むのではないかと思います。
 地球環境、特に化学物質の安全管理の分野で貢献していけることの夢を語り、人が成長し、安心安全の組織を作り、その支援の体制を整えていきたいと念じます。
人を大切にする経営学会の学びはまだまだ奥深いですが、残された人生を関わる皆さんの一人ひとりが輝ける花になるために尽力していきます。

人を大切にする経営学会人財塾 森 裕子

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