日新堂印刷株式会社【No84いい会社視察2013/9/10】

今回は2013年9月に坂本ゼミの北海道合宿先としてご訪問した『日新堂印刷株式会社』さんをご紹介致します。
同社は2010年に坂本光司先生の著書「ちっちゃいけど、世界一誇りにしたい会社」(ダイヤモンド社)の中で紹介されています。

●概要 (http://www.nissindou.co.jp/) 現在のホームページより抜粋
営業本部 北海道札幌市豊平区平岸6条12丁目11-2
代表取締役 阿部 晋也(平成8年9月就任)
設立 昭和57年
資本金 1,000万円
主たる業務
・各種エコ素材名刺製造・販売
・印刷業務全般・デザイン・企画・制作・名刺作成TOPーページ制作
・販売促進支援業務

●阿部社長の生い立ちとお父様の印刷会社を継承
阿部普也社長は、中学生の頃から“世界の中で人の役に立ちたい”と考えていました。大学卒業後、一度は一般企業に就職されますが、“人を大切にしていない会社だった”ということで退職。起業を考えていたそうですがお父様の誘いに印刷会社を継ぐこととなりました。

当初はさまざまな印刷を扱っていたのだと思いますが、“エコ名刺”を大きな事業に育てようと着目されています。
名刺の印刷は簡単なようでもありますが、奥は深いものでもあります。昨今では名刺業界は低価格化と高付加価値化に2極化しています。またリーマンショック後はコスト削減やネット化、デジタル印刷化が進んで業界の様子は大きく変わっています。
そんな中、日新堂印刷は従来の活版や写植(フィルム使用)をベースにした印刷会社からエコ名刺に絞って事業転換を図っています。さらに阿部社長は名刺印刷の技術や仕組みを参考にするために、当時新聞に日本一の名刺印刷会社(東京名刺センター)の記事をみつけて、東京まで訪ねたそうです。仕組みを全部見せてくれたと言います。
同社は北海道の地から世界視野にたってソーシャルビジネスを展開していると言えるでしょう。

●バナナペーパー誕生
多年草で毎年茎を廃棄しているバナナに着目しました。きっかけはスウェーデン人の環境コンサルティング、ペオ・エクベリ氏にバナナペーパーを作らないかと誘われたことです。アフリカで厳しい生活をする人達の役に立てることもあって、阿部社長の想いが現実と繋がったのです。
日本大使館とつながりアフリカの会議で紹介したところザンビア環境省の目にとまったそうです。その結果ザンビアでバナナペーパーの生産を実現させます。
紙の需要を増やすためにワンプラネットペーパーを2012年設立。阿部社長が事務局長を務め、国内の名刺印刷を扱う名のある数社がメンバーとなっています。
現在バナナペーパーは用紙として仕入れています。ザンビアでバナナペーパーを生産する村の人口は5000~6000人。工場で働いている人は18人。1日1ドル以下の生活費が当たり前の中、3ドルの給与と昼食がつくそうです。

●現在の広がり
同社はエコな用紙を多数揃えています。
通常、バナナペーパーのように新しい用紙をつくることは大変なことだと思いますが、同社ではいくつもの特徴的な用紙を揃えています。
ヨシ(琵琶湖の一年草ヨシの再利用と水質保全)
わらがみマガジンペーパー(資源回収された雑誌の古紙を50%以上配合)
湘南 芝(ShonanBMWスタジアム平塚&湘南ベルマーレ練習場の刈芝と地域市町村役場から排出されたシュレッダーくずえが主な原料)
機密文書再生紙(企業の現場で排出されたシュレッダーゴミを再利用した100%再生紙)
そのほかに再生ペットや牛乳パック、竹、桜、帆布、小麦わらなどを再利用した用紙をラインナップしています。
 

●エコ名刺ユーザー交流会
同社には名刺を作成したユーザー同士が繋がる仕組み【エコ名刺ユーザー交流会】があります。阿部社長が中心となって環境意識や共感力をベースに顧客が集まる仕組みです。勉強会や企画を実施されているようです。初対面同士でも仲間意識のある空間はきっと居心地が良いものでしょう。

●印象的だった言葉
阿部社長は同社のビジネスをBtoCではなく、BtoFだと語りました。FはFunです。
“何をするかではなく誰とするか”
“お客様は親友だと思っている”
“名刺で人を幸せにしたい、名刺で人と世界をつなぎたい”

会社の規模や売上ではなく、理念を明確にして、つながりたい人達とつながる考え方は、現代に共感を生むものです。同社がさらに存在感を高めていってほしいです。

***補足***
この投稿では2012/4~2018/3までの6年間法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室で経験した【いい会社視察】・【プロジェクト】・【授業で学んだこと】を中心に、毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(人を大切にする経営学会会員;桝谷光洋)

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