十勝バス株式会社【No87いい会社視察2013/9/8】

今回は2013年9月に坂本ゼミの北海道合宿先としてご訪問した『十勝バス株式会社』さんをご紹介致します。
同社は厳しい事業環境にありながら心のこもった地域密着で事業を回復させ、同地域でなくてはならない存在になっていました。

●概要(https://www.tokachibus.jp/)現在のホームページより
本社所在地 北海道帯広市西23条北1丁目1番1号
設 立 1926年(大正15年)3月
資本金 6,000万円
代表者 代表取締役社長 野村 文吾
事業内容
一般乗合旅客自動車運送事業(乗合バス108輌、路線バス ・都市間バス・空港連絡バス・定期観光バスなど)
一般貸切旅客自動車運送事業(貸切バス22輌)
一般乗用旅客自動車運送事業(福祉ハイヤー1輌、ジャンボハイヤー1輌、小型ハイヤー4輌)
介護事業(居宅介護支援、訪問介護、デイサービス)
従業員数 270人
車輌数 乗合108輌・貸切22輌・ハイヤー6輌
営業エリア 14市町村
年間走行距離 470万km(視察当時の情報から)

●路線バス業界
日本国内において全国的な路線バスの利用者数ピークは今からさかのぼること50年前、1969年でした。十勝バスも1969年がピークで当時2300万人もの利用がありましたが、2010年では402万人となりピーク時から83%も減少しています。
十勝バスは地域の足として長い間その役割を担っている路線バスですが、帯広のマイカー所有率は全国的にも高く、長い間、厳しい環境に直面していたのです。

●経営者;野村文吾氏
現在の経営者は野村文吾氏です。事業を引き継ぐ意思はなかったと言いますが、経営者だった父;文彦氏から同社の危機を聞いて、自分がやらなかればとの思いから、1998年に父が経営する十勝バスに入社、2003年に社長に(おそらく4代目として)就任されます。
十勝バスはその頃から十勝地域の学校や催しに対応したバスの運行やフレックスバス、福祉タクシー、片道定期券、ワンコインバスなどさまざまなサービスを企画し利用客確保に向けて思考を凝らしています。
 *フレックスバスとはバス停がなくステッカーのある電柱に停車するバス。事前に電話予約が必要でお年寄りのためにバス内でも携帯電話を貸し出しています。

●経営危機
2008年、長年の業績低迷に加え原油高が経営を圧迫し、これ以上銀行から融資を受けられない状態に陥ってしまいます。
当時は業績の悪化は人口減少や原油高騰など外部の影響だと考えていましたが、社員の皆さんが自ら苦境を打開するために住民にチラシを配り路線バスの意見を聞いて回る活動を行っています。
その活動はのちに野村文吾社長を巻き込んで、路線住民の住宅を個別訪問する同社の重要な活動になっていきました。
“本音を聞きたい”、それまでにもアンケート調査は何度もやっていましたが、なかなか本音は聞けませんでした。しかし戸別訪問の結果、“「不便」より「不安」だから利用していない”という実態が明らかになりました。バスは不便という思いはバス会社側の固定観念だったわけです。
不安の解消に向けて、「おびひろバスマップ」を全戸に配布、サービス内容を丁寧に説明して回りました。そしてバス内では、乗務員の挨拶やマイク使用を徹底していきます。
そのようにして同社は真の顧客密着・地域貢献のバス会社へ進化していったのです。

●本社近辺の住宅への戸別訪問に同行
視察当日は、住宅訪問に同行させていただきました。
個人宅にアポなしです。お話をしていただける場合はそう多くはないはずですが、玄関先で終わる場合が多い中、当日は数件目でご自宅の中にまで入れていただき、記憶では20分以上お話を伺う経験をさせていただきました。

●最後に
同社は40年間ほぼ利用者が減少し続けるという厳しい路線バス環境の中で、顧客密着・地域貢献を徹底し、真のサービスを追求したことで40年ぶりに路線バス事業の黒字化を達成していました。
トップのリーダーシップのもとで役職者が率先して地域住宅を戸別訪問し、不安解消とともにニーズやウォンツを聞き出す取り組みは、まさに理念経営を体現した取り組みに思えました。さらに同社は社員が一体となってさまざまな企画を実現しています。自社の存在は地域あってのことだと認識している空気が同社の中に感じられました。

***補足***
この投稿では2012/4~2018/3までの6年間法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室で経験した【いい会社視察】・【プロジェクト】・【授業で学んだこと】を中心に、毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(人を大切にする経営学会会員;桝谷光洋)

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