武蔵境自動車教習所【No91いい会社視察2012/10/27】

今回は2012年10月に坂本ゼミの視察先としてご訪問した『株式会社武蔵境自動車教習所』さんをご紹介致します。当日は高橋勇会長にお話を伺うことができました。

●概要 (2012年ご訪問時の資料を元に作成) https://musasisakai-ds.co.jp/
社名 株式会社武蔵境自動車教習所
設立 1960年8月
資本金 1100万円
代表  取締役会長 髙橋勇
代表取締役社長 髙橋明希(4代目)
社員数 110名
事業内容
 ・自動車教習業務(普通車・中型自動車・普通二輪車・大型二輪車)
 ・高齢者講習・取得時講習、ペーパードライバー教習業務
年商 13億5000万円(グループ)

●業界概況と同社の存在感
自動車免許取得を主な事業とする自動車教習所の業界は、若い世代の人口減少、長く続くデフレ期におこったライフスタイル変化など環境変化の渦中にあります。更にこの数年は自動運転技術を中心とした自動車業界の大変革期にあり、今後はますます激動が予想されます。
<同社の資料から抜粋・加工>
1989年 2009年
全国16才の人口 206万人 119万人 (43%減少)
都内全体の教習所入所者数 278,100人 120,900人(57%減少)
武蔵境自動車学校入所者数 4560人(都内20位) 5410人(都内2位)
武蔵境自動車学校シェア 1.6% 4.5%
つい最近2019年の出生数は過去最少の864,000人(前年比約54,000人減)となる見通しであると厚生労働省が発表しましたが、厳しい外部環境にも拘らず、武蔵境自動車教習所を選ぶ割合は大きく向上しています。

●高橋勇会長のお話から
社長になって初めに社員へ伝えたことは“自動車学校はいずれなくなる”ということだったと言います。自動運転技術に象徴されるように自動車業界を飲み込むような産業の大変革は目の前まできているのです。
創業の頃のモータリゼーションの時代には、免許を求めて多くの人が教習所へ来てくれた時代でした。朝4時に並んで予約をしている人もいたそうです。
そんな過去を振り返り、会長は100年企業を目指すと断言されました。
“社員とその家族の生活を守るため”に新事業やグループ会社をつくりこの変革の時代に経営をしていく覚悟でした。

●経営理念は『共尊共栄』
ある勉強会で会社には理念が必要だと学んだことがきかっけで、人生をかけて追求できると経営理念をつくろうと1年間悩んで決めました。
経営者と社員は表面的なつながりではだめだと言い、同社では朝礼で経営理念を手をつないで唱和するそうです。毎朝10分の朝礼も1年間行えば50時間にもなるわけで、貴重で大切な時間だと考えています。朝礼の内容は幹部社員と外部の会社を見学して回り決めたそうです。
社員を信じるためにも、さらに理念を共有することが必要だと言い、理念を作ったことで会長自身の考えもぶれずに楽になったと仰いました。

●お客様向け取り組み
高齢者教育(70才以上は義務)、企業ドライバー研修(事故を起こした人向け教育または 時期しないための教育)の実施に加えて、教習の合間のちょっとした時間を活用してさまざまな企画を実施しています。
免許+癒し ネイル、ハンドマッサージ、カラーセラピーなど
免許+学び ネイル教室、フラワー教室、英会話教室など
また、免許取得までの間、教習と学科のコンサルティングサービスとなるIT-VIPコースがあります。追加教習は無料となり専用ルームがあります。視察前年では約6000名中350名が利用されているとのことでした。(料金は通常約25万円から40万円になります)
このコースでは前年度のトップ10インストラクターが担当します。

●地域貢献
1990年から実施しているサマーフェスティバル。近隣の住民を中心に10,000~15,000人の集客があります。
“社員の目を外に向けたかった”というお話が印象的でした。きっと経営陣と社員全体が充実感に包まれるのだと感じました。
毎年サマーフェスティバルの最後を飾る打ち上げ花火は、近隣の半径1kmくらいの範囲に充分伝わる綺麗で迫力満点の花火です。毎年多くの人が楽しみにしている企画です。

また、近隣小学校向け安全教室や、中学生を受け入れる職場体験、大学生向けインターン、フリーマーケット(チャリティイベント)、餅つき大会などさまざまな年齢層や地域住民に向けた企画がたくさんあります。1994~2009年の寄付金額合計は2700万円を超えていました。

●最後に
同社は1989年4月に就任した2代目社長が、前年結成された労働組合との紛争を思い詰めて就任翌日に自殺するという悲しい歴史があります。その最大の危機に社長に就任された高橋勇現会長の想いは想像を絶するものがあります。
事業転換を図る使命をもって前へすすむ同社。『共尊共栄』という経営理念とともに進んできた歴史はこれからの同社を支えることでしょう。
“免許の記憶は50年続く。命の仕事”という言葉。
同社がこれからどのように事業転換を図るか楽しみでなりません。

***補足***
この投稿では2012/4~2018/3までの6年間法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室で経験した【いい会社視察】・【プロジェクト】・【授業で学んだこと】を中心に、毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(人を大切にする経営学会会員;桝谷光洋)

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