社外社員を大切にする

2020年5月28日の日経新聞朝刊に、「下請法違反最多8000件」との記事が出ていました。下請法違反による公取委の指導・勧告は、2015年には5980件だったのが、徐々に増え続け、2019年は8016件に及んだとのことです。その約50%は支払遅延ですが、代金減額は16.6%、買いたたきも10.4%と高い割合になっています。元請企業の働き方改革の影響により、「下請」企業が擬制となる事例が出てきています。元請企業は、社員を大切にし、残業等も抑え、内製化していた業務を社外に委託したりすることは、それ自体特に問題ではありません。しかし、たとえば物流センターでの仕分け作業を自社で担っていた会社が、その業務を外部に委託するにあたって、捻出しなければならないための費用を「下請」代金を差し引いて当てたり、社員の代わりに「下請」企業の社員に商品陳列を無償でやらせるというような事例が見られています。

日常的な話としては、元請会社の社員の勤務時間に合わせさせられ、例えばその元請会社がフレックスのため、「下請」社員は時間外に業務をしなければならないということが発生しています。これは自社の社員を大切にしていても、社外社員を大切にしていない現れです。そして、これらの問題は新型コロナウイルス感染症の問題が発生する前の昨年に生じていた事例です。新型コロナウイルスのために緊急事態宣言が発せられ、「元請」会社の社員がテレワークになり、隔日勤務となったりした場合に、「下請」会社の社員がそれに合わせなければならず、勤務時間外に対応しなければならなくなり、「元請」会社が、請負代金を自社社員の給与や休業手当に充ててしまい、「下請」会社への支払いが遅れるなどという事態が生じることは容易に想像できます。

 「元請」会社は、新型コロナウイルス禍の中、これまで以上に社外社員を大切にすることが必要です。

(学会 法務研究部会 常務理事 弁護士山田勝彦)

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