土地の所有権
先週の日曜日、民放の「●●●●マンデー!!」「儲かる!ビジネスモデル特許」を見ていたところ、ある会社がドローンによる配送のためのルート作りをするとのビジネスモデルが紹介されていました。建物上空300メートル未満でドローンを飛ばせることができるよう各地権者に許可を求めるビジネスとして紹介されていました。
アイディアに感動したというよりも、300メートル?というところが法律家としては気になりました。
もともと土地の所有権は、原則として上にも下にも及ぶ、というのが私の知識です。300メートルという基準はどこからくるのか?と思いました。
民法には「土地所有権の範囲」を定めた規定があります。ほとんど実務では確認することのない条項ですので、すっかり忘れていましたが、民法207条で「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。」と規定されていました。
では、上空を制限する法令はあるのか?ヒントは航空法でした。
航空法81条及び同規則174条を見ると、飛行機は、家屋の密集地では、障害物(建物等)の上端から300メートル、密集していないところでは物件から150メートル以上のところを飛ばないといけないと規定されています。
したがって、密集地の建物等の上空300メートル以上のところは、飛行機が飛ぶことができ、またこの場合、所有者の同意を必要としていませんので、事実上、建物等の上空300メートル以上は所有権を制限されているわけではないけれども、飛行機は所有者の許諾の有無に関係なく飛行できることになります。つまり地上から300メートル以上の建物等を建てることは所有者の自由だけれども、その建物等の更に300メートル上は、事実上所有権を主張できないことになります。
そこでドローンの問題についてみると、密集地の建物上300メートル以上を飛ぶ場合は、所有者の許可はいらないけれども、航空法が適用され、無人航空機飛行として行政の許可が必要となりますし、飛行機が飛ぶ地域では許可はおりないことになります。一方で、密集地の建物上300メートル未満であれば航空法の許可は必要なく、土地所有者の許可があれば飛ばすことができます(なお、密集地以外は150メートル未満の範囲となります)。
前述したビジネスモデルは、この後者に目を付けたことになります。これは法律的にもなかなか面白い着眼点です。こんな相談を受けてみたいと思いました。
(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)
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