ダイバーシティと理念採用
最近は、ダイバーシティ経営を重視する傾向があり、その取り組みは大変有意義なことだと思います。経産省の定義によれば、ダイバーシティ「(多様な人材)とは、性別、年齢、人種や国籍、障がいの有無、性的指向、宗教・信条、価値観などの多様性だけでなく、キャリアや経験、働き方などの多様性も含みます。「能力」には、多様な人材それぞれの持つ潜在的な能力や特性なども含みます。」とされています。特に社会的弱者やマイノリティの雇用を促進するという意味でも重要な概念です。
ただこの中で、よく考えなければならないのは「価値観」、特に労働価値観です。労働価値に関しては、ご承知のとおりドナルド・E・スーパーの「14の労働価値」の理論があります。
14の労働価値とは、次の14の価値をさしています。その人が働くことについて、どの価値を優先しているかが労働価値です。
- 能力の活用:自分の能力が発揮できること
- 達成:望んでいた結果が生まれた実感
- 美的追及:美しいものを造りだせること
- 愛他性:人の役に立てること
- 自立性:自律的に行動できること
- 創造性:新しいものや考え方を創り出せること
- 経済的価値:お金を稼ぎ、水準の高い生活ができること
- ライフスタイル:自分の望むペースで生活ができること
- 身体的活動:身体を動かす機会が持てること
- 社会的評価:社会的に仕事の成果を認めてもらえること
- 冒険性:好奇心を満たすワクワクする経験ができること
- 社会的交流性:いろいろな人と接点を持ちながら仕事ができること
- 多様性:様々な活動ができること
- 環境:仕事環境が心地よいこと
ところで、人を大切にしている会社は、全て自らの事業活動を社会貢献事業と位置づけ、事業活動を通じて世のため人のために貢献していくことこそ当社の存在意義であるとしています。とすると、そこで働く人が重視する労働価値の中に、前述の「④愛他性:人の役に立てること」が含まれていないと、会社の理念に反する働き方をしてしまう可能性があると思うのです。
ダイバーシティでは、多様な価値観を許容すべきとしていますが、当社の理念と一致する労働価値観をもてていないと不幸な出会いとなってしまいます。そのため理念に共感する人を雇用するという理念採用がとても重要になるのだと思います。
ダイバシティーを取り上げる会社ほど、理念採用を重視しなければならないということになるのではないでしょうか。
(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)
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