改正下請法の内容
今年(2022年)2月18日から施行されている改正下請法の内容は、次の通りです。
まず重要な改正点は、秘密保持契約締結の義務化(改正下請法12条の3第3項)され、また保存対象書類に追加されました。これは、下請けの技術を守るための規定です。そして、政令で秘密保持契約には次のことを規定しなければならないとされています。
①技術資料の名称及び範囲、②資料を保有する役職員の名簿、③秘密保持義務、④目的外使用禁止、⑤義務違反時の賠償に関する事項、⑥技術資料の試用期間、⑦返還(廃棄)方法、返還(廃棄)日
この規定は元請の責任を明らかにしたものですが、下請けとなる企業も、元請けには、秘密保持契約を締結する義務が生じることになりましたので、この点は強気で元請けに要求することが出来るようになりました。
すでに多くの企業では、秘密保持契約を締結していると思いますが、是非、実践をしてください。
次にこの時勢に合わせ、労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分を取引価格に反映しない取引は、「買いたたき」に該当すると明確化されました。
買いたたきの例示として、「労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと」、「労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストが上昇したため、下請事業者が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず、価格転嫁をしない理由を書面、電子メール等で下請事業者に回答することなく、従来どおりの取引価格を据え置くこと」と規定しました。
したがって、コスト上昇分の反映を無視したり、下請業者のコスト高による引き上げ要求に対して、書面やメール等の文書により回答をしない場合には、買いたたきとなります、ということになります。この点も、法令で明確化されましたので、下請会社としては強気な交渉に利用していただきたいと思います。
なお、公正取引委員会は、令和3年3月31日に、下請代金は、できる限り現金によるもの、手形等サイトについては60日以内とすることを要請するとともに、現在は要請ですが、令和6年ころを目途に法改正される予定ですので、この点もご留意ください。
(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)
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