借地権の評価?自家用と事業用の違い

借地人を強く守もっているのが日本の借地借家法です。

借地法ができたのは昭和16年です。まだ私有地をもたない人が大半だった時代に、国民の居住を確保するため、借地人を守る形で借地法ができました。借地はうん十年続きますし、地主が契約更新を止めようと思っても簡単に止めることはできません。地代も安いですし、その一方で借地権の価値は高く設定されています。そのため、最近では借地にするよりも、借主の要望を聞いて地主が建物を建てて、建物を賃貸する(借家)方法を選択するケースも多くなってきました。

その借地権ですが、前述したように権利として高い価値を持っています。土地の所有権に対する借地権の割合、つまり借地割合は、その地域や場所によっても異なりますが、大体、7対3、6対4と、借地権が7割、6割、底地権(所有権)が3割、4割と評価されます。たとえば、土地の価格が1億円だとすると、借地権の価格は7000万円、底地権(所有権)の価格は3000万円と言われたりします。そもそも所有権の方が価値が低いというのは、法律が決めたもので、現代の国民の感覚からはずれてきてしまっているかもしれません。

ところが、この借地権の上の建物が事業物件だと借地権の割合はすっかり変わってしまいます。同じ土地の上に建物を建てても、自宅用なのか、事業用なのかで借地権の評価が変わってしまうのです。事業用の場合、借地権の価格は、土地の時価による借地割合を前提とするのではなく、収益還元法といって、その事業用物件から、今後どの程度の収益が見込まれるかを計算してそれを借地権の評価額とすることになります。

とすると、事業用建物が適正な賃料で収益を上げていれば、それなりの金額になりますが、家賃等が少なかったり、空き部屋が出ていたりして収益が減っていると、借地権の建物の評価は下がってしまうのです。

場合によっては、自宅用の場合には、7000万円の借地権評価が得られるのに、事業用の場合には、4500万円しか借地権評価が得られないということが生じます。たとえ建っている建物が同じでもです。

これも、法律の世界と、実際の私たちの感覚のズレが生じている部分だと思います。お客様にこの点説明しても、なぜ全く同じ建物を自分で使っているのか、他人に貸して賃料を得ているのかで、借地権の評価額が変わってしまうのか分からないと言われることがほとんどです。なぜこのような結論になるのか、理屈は十分合理的にあるのですが(紙幅の都合でそこまでは書けず、また説得的に書ける自信もありませんので省略いたしますが)、納得感がない、というお客様の気持ちには共感できるところがあります

法律の世界は、私たちの生活の混乱を解決するための一定の基準となってはくれますが、万能ではありません。それでもこのルールを基準として世の中が動いているのも実際です。それを上手に利用していく必要があります。

(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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