グロースの翼【伝統はトライ&エラー/ふらここ(東京・中央)】
雛人形、五月人形
明日12日日曜日22時30分から23時
BSテレ東 グロースの翼
グロースの翼【伝統はトライ&エラー/ふらここ(東京・中央)】
▼「赤ちゃん顔」ひな人形で成長▼顔のデザインは3Dソフトで。「かわいい」今風メーク▼人形師の家系。一度は家業を継いだものの自暴自棄に▼独立。でも伝統の壁が…
2021年11月の記事より
株式会社ふらここ 会社概要
会社名称 株式会社ふらここ
代表者 代表取締役 原 英洋
設立 2008年
主な事業 雛人形・五月人形を中心とする日本人形の製造販売
社員数 30
会社所在地 〒103-0004東京都中央区東日本橋3-9-8 furacoco house
会社HP https://www.furacoco.co.jp/
株式会社ふらここの事業内容について教えてください
私どもは雛人形と五月人形の製造・小売を行っております。
雛人形と五月人形をイメージすると、多くの方は一般的な平安貴族を形取って仕立てられたお人形が思い浮かぶかと思います。
しかし、私どもで制作している雛人形と五月人形の一番の特徴は、かわいい赤ちゃんの顔をしたコンパクトサイズのお人形であることです。私たちが制作してい、雛人形については現状21種類お顔があり、五月人形も17種類、合計38種類の赤ちゃんのお顔を使って、お人形作りを進めています。
雛人形、五月人形の今までのイメージとは一線を画したデザインなので、若いお母さんをはじめとした女性方にとても好評をいただいております。
私たちが製作しているお人形は一部商品を百貨店で販売している他、大半を通信販売にしております。そのため、全国どこからでもお買い求めいただけます。
単価的には10万円前後の商品になりますので、「どうしても実物を確認したい」というお客様も多くいらっしゃいます。私たちはそんなご要望にお応えするために東京の日本橋にショールームを開設して、実際に人形を確認できる場を設けさせていただいています。
現在までの来歴について教えてください
私自身、代々人形師の家系に生まれ育ちまして、私の祖父が初代の人形師です。
人間国宝に認定されるほど、人形師の頂点を極めた人間だった祖父のあとを、私の母が実の娘として技術を継承したのですが、私は家業を継ぐつもりは全くありませんでした。
というのも、実は大学を卒業してからは作家になりたいと思っていたんです。
なので、大学卒業後は出版社に就職し、作家さんと実際にやりとりをする中で書く勉強をしていきたいと考えていました。
しかし、私が23歳、社会人2年目のときに、父親が体を壊して急逝してしまい、それをきっかけに3代目の継承者として家業に戻りました。
独立のきっかけについて教えてください
昔から私は伝統的なものを後世に残すためには、その時代のお客様にあったものを作り、しっかりと評価していただくことが大切だと考えています。
なぜこう考えるかというと、例えば現在伝統があると言われている歌舞伎や落語を見ても、当時と現在では変化している部分が多くあります。伝統と言われているものが現在も全て当時のままかというと、そうではありません。
多くの文化や風習が生まれた江戸時代の間ですらもその形は変化し続けていました。
現在、定着していた文化が節目を迎えており、古いものを守っていくだけでは生き残れなくなっています。
それは雛人形や五月人形においても、決して例外ではありません。
そこで、私は変化をせずに伝統の形を守るだけではいけないと思い、新しい人形の企画・開発に携わりました。
あるとき職人さんに「今のお客様が好むものはこういうものだよね」と伝えると「こんなものを作っていては古い良いものを守れない」と大反発を受けてしまいました。
それでも私は納得してもらうために一生懸命職人さんを口説き続けましたが、職人さんと話を進めていく中で、これを家業の中でやることに難しさを感じました。
その結果、新しい取り組みをするために独立に踏み切りました。
了承してくれた親には感謝しかありません。
独立してから一番苦労したことはなんですか?
ありがたいことに、新しいお人形を作って市場に出した結果、反応はとてもよかったです。しかし、創業当時は私の作りたいお人形に賛同してくれる職人さんは決して多くなく、お人形を作ることが非常に大変でした。
そのため、お人形を“どう売るか”よりも“どうやって作るか”に多くのエネルギーを注いでいました。
やはり、職人さんが協力をしてくれなければ、いくら市場が求めていても売れるお人形が作れないので、創業当初は新しい職人さんを開拓しながら口説くことが本当に毎年大変でした。
職人さんを口説くために工夫したことはありますか?
口説くテクニックが何かあるかと聞かれればありません。しいて言うならば、自分の思いをきちんと言葉に出して熱く語れるか、ということですかね。基本的なことではありますが、これが非常に大切だと思います。
職人さんからしてみると、人形を作ることで生計を立てて行かなければいけないので、売れるかどうかわからない人形の製作を安易に引き受けることはできません。なぜなら、作ったお人形が売れなかったら2年目以降の注文は職人さんのところには来ないので、結果収入が得られないということになってしまうからです。
職人さんからしてみれば、売れるかどうかを見極められない状況でお人形の注文を軽々しく受けることができないのは当然のことです。そういった背景もあるので簡単には生産計画も立てられませんでした。
もちろん、私たちも最初は売れるかどうかは分からないわけですが、「自分も頑張って市場に出していきたいんだ」という思いを一生懸命に伝えることで、賛同してくれる職人さんが少しずつ増えていきました。職人さんが制作したお人形が市場に受け入れられて売れたことにより、結果的に職人さんは2年目以降の注文を貰えるので、私達に協力してくれます。
市場に受け入れられるための企画や、しっかりとした販売体制を作ることなど、最初のハードルを越えるために、どれだけ本気になって事業を推進していけるかが、本当に大切ではないかなと思います。
今後の展望についてお聞かせください
おかげさまで、私どもが作ってきたかわいい赤ちゃん顔のコンパクトサイズのお人形が認知され、業績も伸びています。多くのメディアからの取材依頼もたくさんいただいておりまして、「ふらここさんはリーディングカンパニーだよね」という風に、世間的にも認めてくださっています。
社員たちも「私たちがこの文化をどうやって新しく変えていこうか」と誇りを持ち、また楽しみながらも取り組めていると思います。
今後は、現在実際に制作している雛人形・五月人形を、よりその時代のお客様のニーズに合わせて刷新していくことを事業の根幹として大切にしていきたいと考えています。
それに付随して、日本にしかない「独特の人形文化」を大切に守り、さらにそれを育てるために、新たなお人形の開発をしている最中です。
世界を見渡すと、お人形は「呪術的なもの」「おもちゃ」という2つの用途にわけられます。しかし、節句人形は、初めは祈りの対象「呪術的なもの」でしたが、次第に美が追及され、観賞用として磨きこまれてきました。
節句人形を飾ることで1つの非日常空間を作り出し、観賞して楽しむ文化は日本独特のものです。
私どもが作っている新しいお人形が世の中に浸透するには長い時間がかかると思うのですが、世界に類のない人形文化を今の時代に合う形で、もう一度きちんと形にして育てていくことをこれから取り組んでいきたいと思っています。
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