国連「ビジネスと人権」作業部会の声明の影響
国際連合人権理事会の「特別手続き」の中に、ビジネスと人権の作業部会が設置されています。その作業部会の調査が2023年7月24日から8月4日にかけて行われました。この時は、J事務所の性被害の事件がクローズアップされており、その調査もしていましたが、作業部会は、J事務所だけでなく、「国連ビジネスと人権に関する指導原則(NUGPs)」が日本でどのように取り組まれているかについて調査をし、その結果を8月4日、声明という形で出しました。
作業部会は「人権を尊重する企業の責任」として、概ね、次の点を指摘しました。
*企業間で、「ビジネスと人権に関する指導原理」の理解と履行の間に大きなギャップがあり、理解の進んでいる多国籍企業と、家族企業を含め、数にして日本の企業の 99.7%を数える中小企業との間に、大きな認識の隔たりがあり、中小企業へのガイダンスを強化すべきである。
*人権デューデリジェンスの要件を厳格化しない限り、中小企業に「ビジネスと人権に関する指導原理」を採用する動機は生まれないというのが日本のビジネス界の意見であり、人権デューデリジェンスの義務づけが望ましい。
このように特に中小企業のビジネスと人権への取り組みを問題として指摘しました。
その上で、「作業部会は、日本がビジネスと人権分野での官民イニシアチブで十分に取り組めていないシステミックな人権課題について、引き続き懸念を抱いています。女性や障害者、先住民族、部落、技能実習生、移民労働者、LGBTQI+の人々など、リスクにさらされた集団に対する不平等と差別の構造を完全に解体することが緊急に必要です。ハラスメントを永続化させている問題の多い社会規範とジェンダー差別には、全面的に取り組むべきです。」と結びました。
日本の企業は、今現在、人権課題に対して、厳しい対応を取らざるを得ない状況にあります。各社によるJ事務所タレント起用問題への対応にも、この影響が明らかに出ています。
中小企業においても「ビジネスと人権に関する指導原理」を徹底すること、つまり「責任あるサプライチェーン等における人権尊重」による人権方針の策定に取り組むことが大切です。
(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)
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