【No292いい書籍紹介『1坪の奇跡』著者;小ざさ社長 稲垣篤子さん】

今週は東京都武蔵野市の吉祥寺に1坪という狭小店舗で、しかも2種類の商品しか扱っていないにもかかわらず行列の絶えない和菓子屋さん;小ざさ2代目の社長;稲垣篤子さんが執筆された書籍からほんの一部をご紹介させていただきます。

『1坪の奇跡』著者;小ざさ社長 稲垣篤子(ダイヤモンド社)

●章立て
プロローグ 40年以上、早朝からできる行列の裏側で
第一章 2品だけの究極の味を求めて
第二章 たった1坪の店で
第三章 私の仕事観を形づくった出来事
第四章 屋台からの「小ざさ」創業
第五章 父から娘へ
第六章 障がいのある子供たちと共に
第七章 次代に伝える
エピローグ 125歳まで現役で

●小ざさ誕生まで
この本は、現社長稲垣篤子さんの半生を描いた自伝になっています。稲垣社長の生まれは1932年です。小ざさの創業は1902年生まれのお父様;伊神照男さんが小ざさの前身となるナルミ屋を1931年吉祥寺に設立したことから始まります。
ナルミ屋は順調にお客様が増えていきました。そんな時代の流れの中で、照男さんは奥さんにお店を任せて満州に渡り商売を進めますが、戦争、お店をたたんでの疎開、そして敗戦を迎えます。音信不通だった照男さんは終戦2年以上経って満州から帰国。激動の時期を挟みながらも1951年に小ざさが誕生します。

●仕入先や障がい者雇用
仕入先を共同体と考え、当然のことながら安い仕入先に変えるようなことはあり得ません。長年の意思疎通が積み重なった濃密な関係を知ることができます。
更に30年以上も前から障がい者雇用をしています。障がいをもった子供の人生を背負った養護学校の先生の熱心なお誘いが何とも心に刺さります。そして障がい者のお給料は一般社員と同じで、障がい者雇用の助成金も辞退しています。数年前のデータでは約30名の社員中3名が障がい者でした。

●最後に
この本は、戦前戦後という厳しい時代背景の中、創業者;伊神照男さんの思いが生んだ羊羹という芸術、そして実の娘である稲垣篤子さんが高いレベルで受け継ぐこと、言葉ではなくからだや感性で体得して初めて到達した世界を感じることができます。
また文章は洗練されていて言葉が豊かです。女性のさまざまな立場や視点としての思いが詰まっていると感じました。
稲垣篤子さんの信念や情熱はマネのできるものではなく、ただただ圧倒される内容です。何を大切にして生きるのか、とても参考になる書籍です。是非多くの方に読んでいただきたいです。

***補足***
この投稿では「法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室」や「人を大切にする経営学会」での経験をもとに毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(人を大切にする経営学会会員;桝谷光洋)

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