2024年の法改正

2024年も多くの法律改正がありますが、業界に関わらず重要な改正は、労働関係法の改正です。

 労働者を雇用する時には、会社は、労働者に対して、労働条件を明示しなければなりません(労働基準法15条)。この労働条件には、必ず記載しなければならない絶対的明示事項と、会社内で定めを置いた場合には記載しなければならない相対的明示事項というものがあります。

 この具体的な記載事項は、労働基準法ではなく、労働基準法施行規則で定められています。今回、この規則が変更されました。これまで絶対的明示事項は次の事項でした。

  • 労働契約の期間に関する事項
  • 就業の場所、従事すべき業務に関する事項
  • 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働(早出・残業等)の有無、休憩時間、休日、休暇、労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
  • 賃金(退職手当等を除く)の決定、計算・支払の方法、賃金(退職手当等を除く)の締切、・支払の時期に関する事項
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
  • 昇給に関する事項

 改正法では、この②就業の場所、従事すべき業務の記載について、改正前は労働契約時の就業の場所及び従事する業務を記載すれば足りていましたが、将来就業の場所や従事する業務が変更される可能性がある場合には、その変更の範囲も記載しなければならなくなりました。施行規則では、②の記載の後に(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。)と規定されました。

 また新たな条項として、次のような内容が追加されました。

 有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間(労働契約法)第18条第1項に規定する通算契約期間をいう。)又は有期労働契約の更新回数に上限のさだめがある場合には当該上限を含む。)

 つまり、契約更新をする場合には、回数の上限があればその上限、なければない旨を明示しなければなりません。これまで無期転換権が発生する前に有期雇用の雇止めをしたりしていた会社は、契約更新は3回迄とか、通算契約期間は4年間等と記載しなければならなくなりました。

 さらに無期転換申込権が発生する労働者に対しては、そのことを明示することが必要となりました(「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」の改定参照)。

 人を大切にする会社では、有期雇用はあくまで社員が選択しているに過ぎず、5年の無期転換を待たずに、社員の希望でいつでも無期転換ないし正社員採用への道を開いている会社が多くあります。法律はあくまで最低限の基準を示しているに過ぎません。ただ明示義務は、どの会社にも関わりますので、労働条件通知書等にこれらの記載漏れがないように注意をしていく必要があります。

 (学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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