経営人財塾での学び
経営人財塾6期生、医療法人社団わく歯科医院の今井進吾です。この原稿が配信されている頃には経営人財塾でのプロジェクト研究発表も終え、1年間の学びを修了して一息ついている頃だと思います。ご指導頂きました坂本先生、ご登壇頂きました先生方、コーディネーターの先生方、学会関係者の皆様、人財塾の皆様に改めて御礼を申し上げます。
昨年4月に経営人財塾に入塾させて頂き、「あっという間の1年間」を実感しております。坂本先生や登壇される先生方からの学びは一般的な知識だけではなく、既得の知識と関係づけられることで、構造化され、自身の経験と結びついて、様々な場面で活用できる概念的な学びをご教示頂きました。そして修学が深まるとともに、「思考の変化」を実感し、行動変化に実践できる学びとなりました。
概念的な学びから思考の変化を経て、行動変化の源泉となったのは企業訪問でした。今期も坂本先生と経営人財塾6期生が研究調査の一環と致しまして、合計45社の企業様を訪問させて頂き、調査の結果を書籍として発刊することとなりました。
「いい会社に学ぶモチベーションの高め方 -人を大切にする45社の事例-」
ラグーナ出版(2024/3/18発売予定)
私は研究調査の1社として群馬県前橋市の株式会社ATホールディングス様にお伺い致しました。株式会社ATホールディングスは廃棄物の収集運搬・中間処理・最終処分を行っている会社です。
環境に関わる業種ということもあり、いま在るもの大切にすることを目的として、2023年10月に既存の建物をリノベーションされた新しい社屋にお伺いさせて頂きました。そして50項目近いインタビュー調査を、グループ代表の堀切様にご対応頂きました。
同社では先代から続く「論語」に基づいた教えがあり、同社の風土となっています。「人」を一番の財産と考え、「心」の伴う経営を行い、「道徳や倫理観」を大切にされていらっしゃいました。見学の際にその風土の一端を拝見致しました。同社の習慣として、収集や運搬を行った後、帰社された従業員の方々に、事務所の従業員の方々が飲み物を出して慰労する文化があります。出される飲み物は季節や天気、気温に合わせで事務所の方々が選ばれ、「お疲れ様でした!」と声をかけて慰労される姿が日常的な光景になっています。
調査にお伺いしたのは10月でしたが、その日は日中の日差しが強いこともあり、戻ってきた従業員の方に冷たい麦茶を差し出して、疲れを慰労する思いやりが感じ取れました。堀切代表に伺うと、「彼女はその日の天候や個々人の好みで、飲み物を変えているんですよ。」と、差し出した社員の方に感謝の目を向けながらおっしゃっていたのが印象的でした。
そして、取材に赴いた私にも、きれいな切子が印象的なグラスに入れられた冷たい麦茶が運ばれて参りました。麦茶を口につけるとグラスの飲みやすさに驚き、「このグラスは飲みやすいですね。」と堀切代表にお伝えすると麦茶を運んでくださった別な従業員の方とお二人で笑顔を見せられ、「このグラスはお客様用に、彼女が選んでくれたんですよ。」と教えて頂きました。
従業員の方々の大切にしている思いを経営者がしっかりと見て、認識しているからこそ、一人一人が輝ける環境を作り、「心の伴う経営」を実践され、風土化されるのだと貴重な学びをご教示頂いた場面でした。
人財塾の講義でも天彦産業様のエピソードも印象的でした。登壇された樋口会長からは従業員の方のエピソードを伺いました。
その日は岡山県で降雨という情報を知っていた従業員の方が、製品を大阪から広島へ出荷されるトラックに気づき、運送の途中で雨に濡れないよう、製品を防水梱包されたそうです。この心遣いに感動したお客様がファンとなり、顧客となったエピソードが語られました。
このエピソードを伺ってから約1か月後、樋口会長には私の勤務先である「わく歯科医院」へ、人を大切にする経営の講義にお越し頂きました。天彦産業様本社のある大阪から、当院の所在地である兵庫県丹波市は車で2時間を超える遠路です。午後13時から講義をして頂き、院長だけでなく職員の質疑応答にも応じて下さり、当院の診療終了後に催した懇親会までご参加頂きました。そして翌日はまた大阪に戻られ、昼過ぎからの天彦産業内での会議に出席されるという過密スケジュールの中で、送迎の車中でも(得意の?)漫談も披露されながら、多くの相談に応じて頂きました。この時点でも感謝の思いでいっぱいでしたが、驚いたのはその後でした。
人財塾6期の同期には天彦産業常務取締役の脇本さんがいらっしゃいます。人生の先輩でもある脇本さんに、樋口会長がお越し頂いた御礼を申し上げようとしたところ、脇本さんの方から「先日はうちの会長がありがとうございました。送迎までして頂き感謝致します。またいつでも言ってください。丹波くらいまでならまだまだ、全然大丈夫ですよ!」とこちらが御礼をお伝えする前に御礼を伺うことになり、さらに脇本さんのお話しぶりも「全然気にしないで!」とあっさりとされたご対応に驚きました。
また、今回の樋口会長の来院については関西支部事務局長の佐々木さんへ相談させて頂き、樋口会長へ申し入れをさせて頂きました。同行してくださった佐々木さんにも御礼をお伝えしたところ、「またいつでも言ってください。いつでも樋口さん連れていきますよ!」と脇本さんと異口同音に「モノ」(表記はご容赦ください。)でも運ぶかのようなお言葉が返って参りました。
よくよく考えてみると、日頃から学会活動推進を実践されている樋口会長が、近しい方々に対して「学会の学びを広めることの手伝いが出来るのなら、俺は何でもする。」とお伝えされていることを、周囲が心で理解している結果としての対応なのだと、得心致しました。
人財塾での学びはこうした心に響く学びと、良質な人間関係が得られる貴重な時間でした。坂本先生が長年研究された学びを我々塾生と共有化して頂き、登壇される先生方やコーディネーターの先生方からの支援を受けて、塾生が学び合う場でもありました。 今後も学びを深め、5方良し経営を実践して、社会課題の解決を行っていくことで、御恩返しをさせて頂きたく思います。
人財塾6期生 医療法人社団わく歯科医院 今井進吾
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