NHK大河「光る君へ」を仕事に活かす(源氏物語) 蛍・物語論
源氏は36歳、太政大臣として政治の中枢として活躍し、夕顔の娘である玉鬘は22歳と美しく成長しました。
長雨がひどく続き退屈なので、玉鬘は、一日中物語を写したり読んだりなさいました。玉鬘は様々に珍しい主人公のことなどを、真か偽りかと言い集め、その中にご自分の身の上のような姫はないか……とご覧になりました。
源氏は、「あぁ、困ったことだ。女性こそ人に騙されるために生まれてきたのか……。沢山の物語の中に、真実のことは少ないだろうに、それを知りながら、つまらぬ話に夢中になり騙されなさって、物語を書き写しなさるとは……」と仰って、お笑いになる。
玉鬘は、「本当に……。嘘をつき馴れた人が、さまざまに想像するのでしょう。私にはただ真実のことと思わずにいられません」と、硯を押しやりなさいます。
源氏は、「ぶしつけに、物語のことを悪く言ってしまいました。神代より、世にあることを書き記したものだそうです。日本紀などは事実などを、ほんの一部しか伝えていません。物語こそ、道理に近い詳しい事が書かれてあるのでしょう……」とお笑いになりました。 「誰それの話といっても、ありのままに物語ることはありません。善いことも悪いことも、この世に生きている姿で、見飽きず聞き流すことの出来ない事や、後世に言い伝えたい事を、心に閉じこめておくことができずに、言い伝え初めたものです。善いように言おうとするあまりに、善いことばかりを選び出して、読者の要望に応えたり、また悪いことであり得ない事ばかりをとり集めて書いているのは、皆、善いも悪いもそれぞれのことで、この世のことなのです。 」と、物語を大層もっともらしいことのようにお話になりました。
玉鬘は、「ところで、このような昔の物語の中に、私のように真面目な愚か者の物語はありませんか。大層よそよそしい姫君でも、貴女のように空とぼけている人はありますまい。そうでなくても、私たちのように珍しい親子関係は世の噂になるに違いありません……」と申しました。
源氏は、「どうして珍しく思われましょうか。本当にあなたに心惹かれるのです……」と、寄り添って座りなさいますのは、大層不作法な態度に見えました。 (人を大切にする経営学会:根本幸治)
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