下請法運用基準の改定

公正取引委員会は、令和6年5月27日、下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」の改正をしました。改正は、令和5年11月29日に公表された「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」等を踏まえて、下請法の買いたたきの解釈、考え方を更に明確化しました。

 運用基準では、「通常支払われる対価」については定義があります。それは、「当該給付と同種又は類似の給付について当該下請事業者に属する取引地域において一般に支払われる対価(通常の対価)」とされていました。

しかし、一般に下請法が問題となる場合は、通常の対価が分からない場合です。改訂前は、単に前に同様の取引をしていれば、その取引の単価で計算された額が通常の対価であるとされていました。しかし、これでは元々下請代金が低額の場合には、判然としません。そこで改訂運用基準では次のように定められました。

従前と同種又は類似の取引の場合に、次の額を「通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額として取扱う」

 ア 従前の給付に係る単価で計算された対価に比し著しく低い下請代金の額

 イ 当該給付に係る主なコスト(労務費、原材料価格、エネルギーコスト等)の著しい上昇を、例えば、最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率などの経済の実態が反映されていると考えられる公表資料から把握することができる場合において、据え置かれた下請代金の額

つまりコストが公表資料から上がっていることが明確であるにもかかわらず、下請代金額を据え置く場合は、「著しく低い下請代金」として「買いたたき」とされる可能性が高くなりました。

7月17日付け日経新聞電子版によれば、夏のボーナスについて、「中小伸び率7.8%、大手上回る」との記事が出されています。春の賃上げでも中小企業の伸び率は大手企業を上回っています。その理由としてエコノミストは「大企業との人材獲得競争を視野に入れた防衛的な引き上げ」だと分析していますが、下請が主な事業収益である企業が財務を逼迫することなく、社員に必要な賃金を支払うことができるためにも、下請法運用基準の改定は意味があると思います。

買いたたきによる相談を公正取引委員会はオンラインで受け付けています。

https://www.jftc.go.jp/soudan/shinkoku/shitauke_higijijitsu.html

社員を、お客様を、会社を守るためにも、不当な経済行為に泣き寝入りしないことが大切です。

(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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