計画運休等への対応

明日、明後日は、第11回人を大切にする経営学会全国会議が開催されます。

既に皆さまご承知のとおり、台風10号の影響を考慮し、大会は全面オンラインとすることが決定され一昨日告知されました。坂元光司会長、井上善海実行委員長及び実行委員の皆さまの苦渋の選択に深く敬意を表します。最近は、イベント等も含めて、実施の利益よりも参加される方の生命・身体の安全を最優先した決断を早めに出す傾向が多くなってきました。素晴らしいことだと思います。

 このような対応は、ここ最近、企業でも積極的に取り入れられています。台風等による影響による交通混雑の緩和、社員の安全確保のために出勤抑制や早期帰宅を計画的に広く実施していくことは大切なことです。もとより企業経営の場合、自社の事情のみで解決できず、取引先、関係企業、お客様への配慮と調整が必要となりますし、業務内容によっては出勤せざるを得ない企業もあります。したがって、当該企業のみの問題ではなく、周囲の理解と協力が不可欠な場合もあります。

 もし出勤抑制をする場合、企業としてはどのような対応が必要でしょうか。

 コロナ禍以降、多くの企業でテレワークが導入されました。計画運休等の場合は、社員に出勤させずテレワーク等で対応をしてもらうということは一つの方法です。

 しかし業務内容によっては、テレワークで対応できない場合があります。この場合に出勤を停止する際はどのように考えればいいのでしょうか。

 会社によっては、そのような場合には特別休暇(有給)として、年次有給休暇とは別に有給の休暇を認めるところもあります。なおこの場合に年次有給休暇を適用させることはできません。年次有給休暇は、社員が自由に利用できるものであって、会社が出勤停止を決めた場合に強制的に取らせることはできないからです。

 特別休暇等の制度がない場合には、法律的には休業となります。この場合、休業手当(平均賃金の60%)を支給すべきかどうか問題となります。この場合、台風等により、通勤手段である電車等が計画運休となったとしても、他の手段等により通勤可能性があるような場合に、あえて会社が出勤停止にする場合は休業手当を支払わなければならないとされています(労基法26条)。なお台風等により会社の施設等が直接的な被害を受けて事業等がどうやっても出来ない場合は、法律的には休業手当を支払う必要はありません。

社員の生命・身体の安全のために出勤停止を決断し、実施した場合に、会社は社員に対して休業手当を支払わなければならないということは、経営者にとっては納得できない面があるかもしれません。しかし、賃金もまた社員とその家族の生活を維持するために必要不可欠なものであり、せめて休業手当を出すことは当然だという意識を持つことが必要だと思います。

東京都が令和2年に「計画運休時の出退勤ガイドライン」を策定しています。参考にしてみてください。

https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/009/623/2020062902.pdf

(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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